99.8.7の独り言

 世の中、理解を超えたことが起こるものだ。

 マンハッタン中心部に数ブロックごとに店舗を持つドラッグストアのチェーンに、「DUANE READE」がある。ドラッグストアと言うのは、コンビニを大きくしたような感じ。もちろん薬も売っているけれど、ちょっとした日用品から文房具、お菓子や飲み物などを扱っている。うちの会社の近くにも2店舗あり、チョコレートや飴などをよく買いに行く。

 会社の近くの「DUANE READE」のうちの1軒に行った。お釣りは22セントなのに、10セント硬貨2枚しかよこさない。

 ふと思い出してみれば、前もその店で、お釣りは76セントなのに25セント硬貨3枚しかもらわなかったことがある。その時は何だか面倒だったし、深く考えずに「どうでもいいか」と、そのまま店を出た。

 今回は後ろに並んでいる客もいなかったし、私の機嫌も悪かった。店員も暇そうだったので、「お釣りは22セントじゃないの?」と言ってみた。その店員、なんと「うちの店には1セント硬貨はない」とぬかしやがった。

 レジが5つか6つはある店である。私はさらに「店中に1セント硬貨が1枚もないのか?!」と尋ねる。店員は「うちには1セント硬貨はない。この1ヶ月、1セント硬貨はない」と繰り返す。

 そして「I owe you 2 cents.」と繰り返す。はっきり言って、私の英語力では理解を超えている。友達同士ならわかるよ。店員が通りすがりの客に向かって、「2セント、借りね」って、どういう意味だよ?! もちろん、借入書を書くわけでもなければ、金券をくれるわけでもない。

 私が1セント硬貨を3枚持っていれば、25セント硬貨でちゃんと釣りをくれるんだそうだ。あいにく、財布には1枚の1セント硬貨もない。

 こうなったらとことん聞くしかないので、「これがあんたらのビジネスのやり方なの?」と言った。こんな一介の店員捕まえて何を言っても無駄なことは、わかってはいるんだけど。店員は「ビジネスじゃなくて、1セント硬貨がないんだ」と繰り返す。まったく理解できん。意味不明もいいところ。既に午後の遅い時間、今までに1セント硬貨を払った客だって、絶対にいるだろうが!!!

 あまりのことに呆然として、「マネージャー呼べ」と言おうかどうか迷っていたら、他の店員が「25セント硬貨を渡せばいいじゃない」と言った。私の前の店員はレジを開け、呆然と差し出したままの私の手のひらに乗っていた2枚の10セント硬貨を取って1枚の25セント硬貨を乗せた。

 最後まで理解を超えている。レジの数字と実際の金額が合わないとか、この店では関係ないのか??? 1日に何百人、何千人の客があるか知らないけど、全員にこんな対応をしていたら結構な金額が余分に貯まるだろう。その金はどうなるんだよ? 店員のチップにでもなるのか? そうだとしたら、客との対応より従業員同士の会話を優先して、ちんたらちんたらしか仕事しないこんな連中に、望みもしないのになんでチップを渡さなきゃいけないんだよ?(店員の態度は、別にこの店に限ったことではないが) それとも、どっかの非営利団体にでも寄付するのかね?

 一つだけ言えるのは、私は2度とこの店を使わないということである。

 会社の近くにもう1軒ある、同じ「DUANE READE」のチェーン店。当たり前だが、こちらは1セント硬貨も混ぜてお釣りをくれる。


 少し前になるが、今年の2月に新日本プロレスからレスラーとしては引退したマサ斎藤の著作『プロレス「監獄固め」血風録』を読んだ。その、もう少し前には、やはり新日本プロレスのレフリーを引退したミスター高橋の『プロレス、至近距離の真実』を読んだ。

 プロレスファンの間ではミスター高橋の本は名著とされており、それなりに売れたようだ。もちろん、こちらも面白かった。しかしミスター高橋の本は、プロレスに興味がない人が読んでも意味不明な部分が多いのではないかと思う。

 対してマサ斎藤の本は、はっきり言って期待をはるかに上回る面白さであった。彼は単身アメリカに渡り、ほとんど独力でアメリカに自分の居場所をみつけ、自分の地位を築いて来た人だ。彼のアメリカでの苦労話(武勇談?)や、全米各地の描写、アメリカ人に対する評価に、いちいちうなずいたり納得したりしながら読んだ。(猪木信者として読んでも、好感が持てる)

 マサ斎藤の『プロレス「監獄固め」血風録』、面白いぞ! プロレスに大して興味がない人でも、アメリカに興味がある人、アメリカで一旗揚げたい人は必読だね。

 勝手に抜粋引用させて頂いてしまいますが、「ニューヨーク・ライフっていうのに最近の若いやつは憧れるらしいが、冗談じゃない。俺にとっちゃ何の楽しみもない、ただひたすら稼ぐためだけに生きていたような時代だ」(中略)「(競争と金が)人間のエゴと欲望をかき立てるのかな」(中略)「あの街はアメリカ合衆国の中にあるが、けっしてアメリカという国じゃない。いろいろな欲望に取り憑かれた野獣が集まって、サバイバル合戦を続けている独立国だ」


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