99.3.4の独り言

 先日、プロレス雑誌を読んでいた。はるばるアメリカまで、格闘技を観戦に来た筆者の道中記が掲載されていた。アメリカに向かう機内で筆者の隣に座ったのは、アメリカに留学中の20才の男の子だったそうだ。留学生は、筆者に「小林よしのりの『戦争論』」の話をしてきた。筆者は昔の小林よしのりと宅八郎の話なんかを思い出して何気なく「小林よしのりは馬鹿」と言ったところ、留学生は真剣に小林の擁護をし、最近の小林を称えたのだそうだ。しかもこの留学生、将来は国連で働きたい、などとのたもうたそうだ。

 筆者にまったく他意はない。単なる機上のエピソードとして、さらっと書いているだけだ。私は無茶苦茶、いやぁ〜な気分になった。

 連中の洗脳は、思っている以上に日本で効果を上げているんだな。こんなのがよりによって国連で働きたい、なんて言うのか。自衛隊の間違いじゃないのか? しかし今、一番安保拡大を恐れているのは現役の自衛官らしい。こいつの就職先は、どっちかっつぅ〜と防衛庁か?

 主義主張は個人の自由だ。「ナチのガス室は正しかった」と発言する権利は、世界的には、ある。ドイツにおいて、こんなことを公の場で言ったら罰せられるだろうけど。「ナチのガス室はなかった」と、あたかも事実のように発言したら、世界的にも許されないだろう。

 「従軍慰安婦がいたっていいじゃないか」と言うヤツがいたら、私はそいつを死ぬほど嫌いだけど、それだけだ。「従軍慰安婦なんていなかった」とぬかすヤツは、タイムカプセルでも何でも使って青春時代のそいつを誘拐して何年も監禁して毎日強姦して後遺症が残るほど拷問して、同じ目に遭わせてやりたいね。最も、藤岡とかいう扇動者も、本気で「いなかった」なんて思っちゃいないんだろ? 本当は「いたっていいじゃないか」と言いたいんだけど、さすがにそうも言えなくて「いなかった」って言ってるんだろ? それとも連中は、本当にとてつもない馬鹿なのか?

 私は連中の著作は読まない。敵を知るためであっても、売り上げに貢献するなんてまっぴらごめん。普通に生活していても、身の回りに不愉快なことは掃いて捨てるほどある。その上、不愉快になることがわかっている本をわざわざ読んで、貴重な時間を使うなんて冗談じゃない。大体私が連中の著作を読んでも、全体に大ウソであることはわかっても個別の誤りを指摘できる訳ではないから意味がない。

 小林よしのりは優秀な漫画家なんだろう。彼の漫画は、きっと面白いんだろう。連中にとって、最高の宣教師でありスポークスマンであり広告塔なんだろう。別に「小林よしのりの漫画、面白かった」ってのは構わない。しかし最後の1文が故意に抜け落ちていることを忘れてもらっては困る。「この物語はフィクションであり、登場する人物、団体などは実在のものとはいっさい関係ありません」

 歴史の中の、自分たちに都合のいい一部だけ抜き出して、後は勝手に肉付けして、あたかも本当の歴史であるかのようなお話を作る。ここまではいい。それをあたかも真実であるかのように発表している。こんなことが堂々と許される日本という国が理解できない。

 ドイツにだって、ネオナチはいる。ユダヤ人嫌いって人も、世界中にたくさんいる。アメリカの政財界には、白人至上主義者がうようよしてるだろう。だけど、これらはあくまでアングラであって、密教とか黒魔術みたいなもんで、誰とも知れぬ機上の隣人なんかに向かって、間違っても口にするようなことではないのだ。政治生命、ビジネスの成功、人気獲得のための、タブーだ。

 話はどんどん飛躍するが、私は「愛国主義」とか「民族主義」とかも、大嫌いだ。「愛」なんて美しい文字がくっついているが、要は「排他主義」だろ? 自国を愛する、大いに結構。だったら人類全部、愛せよ。ついでに他の生物も、自然も、地球も、全部愛せよ。どの国にだって、いいヤツも嫌なヤツもいるのだ。なんで国とか民族で区切るのか? 「愛国主義」の実際の意味ってのは、文字の意味と全然違う。

 私が日本を好きか? まぁ好きだ。四季があって美しいし、湿度が高い気候も好きだ。細く複雑な道、車の運転も楽しい。日本の国土は好きだ。日本人としての誇り? 小指の先くらいはあるかもしれない。日本は世界一便利でサービスが良かったし、どの商品も質がいいから。アジア人としての誇りだったら、もっとある。

 さらに話が飛躍するが、日本の右翼も大嫌いだ。一口に右翼と言ってもいろいろあるようなので、本当はまとめて「右翼」なんて言ってはいけないのだろう。私が嫌いなのは、街宣車に乗ったりして、テロ活動や脅迫活動で金稼いでるゴロツキ右翼。あんたらの敵って何なのよ? 中国や韓国なわけ? 少数民族なわけ? 民主主義なわけ? アメリカは敵じゃないのか? 安保には反対しないのか? スーパー301条には抗議しないのか? ITCなんて万死に値するんじゃないのか? 米国大使館に街宣車乗り付けないのか? 馬鹿なアメリカ人が日本製のラジカセ壊した時、対抗してアメ車たたき壊した右翼がいたか? もしいたのなら、「ゴロツキ右翼」じゃなくて「立派な右翼」だと認めよう、嫌いじゃない。異なる意見を持つ相手でも筋が通ってりゃ、同意はしなくても認めるし敬意も払う。「ゴロツキ右翼」がやってることは、単なる弱いものいじめの自己満足だろ。


 かなり脈絡がなくなってしまった。さらに飛躍しそうなので、今回はこの辺で失礼。

 この手の攻撃的ネタは、実はたくさん貯め込んでいる。しかし今年に入って、日々の生活のあまりのストレスから体調まで崩すし、私の耐性が衰えていた。身の回りの不快さに耐えるのが精一杯で、世間のことなんてどうでもいいという気分もあった。

 3月だ。とりあえず、気分だけでも春だ。実際には間もなくアパートの暖房が切れてしまい、6月くらいまで毎晩アパートで手足をかじかませて今より寒い思いせねばならないことはわかっている。それでも、冬が終わりかけていると思うと少しは力が湧いてくる。永住権取得の先も見えた。自分を押しつぶしそうだった身の回りの不快さが、復活とともに怒りに変わる。

 怒りはエネルギーである。喜びもエネルギーだ。幸福は、残念ながら多くの場合、外に向かうエネルギーを減退させる。


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