98.8.30の独り言

 うちの会社は日本語の出版社である。社長は40代半ば、日本の大手新聞社を辞めてアメリカでこの会社を始めた。経済が専門ということで、その分野の知識はそれなりにあるのだろう。しかし、ノリとしてはバリバリのジャーナリストというよりは、よくいえば経営者向き、平たく言えば中小企業=個人商店のおっさんである。パソコンは、電源を入れることはできる。起動すると勝手にメーラーが立ち上がるため、電子メールを読むことはできる。しかし、返信を自分で書くことはできない。パソコンの終了はいきなり「電源ブチッ」・・・そんな、ある意味、典型的な「おじさん」である。

 私が夏休みに入る前の7月、彼はベージュの夏物のスーツを着ていた。それがまた、来る日も来る日も毎日、同じスーツだった。ブルーやグレーのスーツなら目立たぬものを、ベージュだったりするもので、比較的他人の服装に無頓着な私でも同じ物を着ていることに気づいてしまう。さらにめざとい同僚の話によれば、Yシャツも数日間は同じ、ネクタイも・・・といった具合であった。

 私が3週間の夏休みを終えて久々に会社に戻った際、社長は1週間の夏休み中であった。家族とメキシコに行ったという話であった。

 週が明け、社長の夏休みも終わった時、私が目にしたものは相変わらず同じスーツを着た彼の姿であった。色も心なしか、ベージュからカーキ色に近くなっている気がした(_ _;;;...。同僚に聞いたところ、私が留守の間も彼はずぅ〜っと同じ服装だったそうである。

 別に「おしゃれしろ」とは言わないが、一体、どうなっているんだろうか? こういう人の頭の中って、綺麗とか汚いとか、あるいは恥ずかしいとか、他社の人間に会うのによれよれのシャツではみっともないとか、そういうことを考えるための機能がないのだろうか? 下手したら、風呂上がりに同じ下着を着たりするのだろうか? ああ・・・考えたくない(_ _;;;...。

 7月は「家族が夏休みで留守なのか」とも思ったが、一緒に夏休みを過ごした後も服装が替わらんとは・・・。オヤジの存在が見えてもいないほど仲が悪い家族でもなさそうだし、誰か何か言ってやれよ。例えオヤジが鬱陶しいだけの存在でも、だよ、自分の家族が他人に汚いと思われてるなんて、恥ずかしいじゃないか・・・。ちなみに奥さんは夏木マリ風の綺麗な人で、「無頓着なおばさん」といったイメージでもない。まぁ、他人の家のことはよぉ〜わからんけど。

 何にしても、9月に社長と一緒に取材に行く日が、せめてYシャツだけでも交換した日に当たることを祈るのみである。


 私は夏休みに髪を切り溜め(?)した。元々、3週間も留守にしていたし、髪型よりも真っ黒に日焼けした顔で出社した方がインパクトが強かったらしく、「日に焼けましたねぇ〜」とは言われたが、髪型のことは誰にも何も言われなかった。大体、大して親しくない人間から、「髪の毛切ったんですか?」「似合いますね」なんて社交辞令を言われるのは苦手なので、正直ほっとした。

 会社に復帰してから1週間も経ったある日、おもむろにある同僚から「もしかして髪の毛切りました?」と聞かれた。他の人は気づいてもいちいち口にしなかったと思われるが、この同僚は本当にその時に気づいたのだろう。あまりに今さらなので、笑ってしまった。

 口にするしないはともかく、顔を見たら嫌でも髪型も目に入ると思うんだけど・・・。こういう人って結構いるものだが、やっぱり謎である。


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