今週末は独立記念日の3連休だった。「この休みこそ!」と固く心に誓っていたこと、それは先日買った「奪われし未来」を読むこと。先日って、一体いつのことだよ? すげぇ〜前じゃねぇ〜か、と突っ込まないで頂きたい(_ _;;;...。
日本でもベストセラーになっているそうなので、既に読んだ方も多いだろう。内分泌攪乱化学物質(「環境ホルモン」という言い方は、響きがのどかでどうも気に入らない)について書かれた本だ。読む前は、ここそこで見聞きする情報の集大成、くらいに思っていた。大方の内容は、読む前からわかっているつもりだった。
予想に反して、あまりにも衝撃的な内容であった。
例えば、野生生物の激減について。フロリダのワニの生殖異常といった、いくつかの事例は知ってはいた。それでも、恥ずかしながら私も今まで、種の激減に関してリゾート開発や森林伐採に代表される環境破壊や乱獲といった直接的原因に主な理由を求めていた気がする。汚染されていない場所もあるだろうと思っていた。まさか熱帯の蛙や北極熊まで、内分泌攪乱化学物質のために絶滅の危機に瀕しているとは思っていなかった。
人間についてなら、せめて未開の地に住む人々くらいは、幸せな人生を送っているものと思っていた。生殖能力の恐るべき減退からは、地球上に住む誰も、逃れられていないそうだ。
一応「わが身を守るために」といった章もあるが、何の助けにもならない。自治体ですら調べていないかもしれない水道水の未知の成分なんて、知りようがない。六甲のおいしい水もエビアンも、プラスチック容器に入っている限り汚染されている。蒸留してから飲めったって、大学の研究室から蒸留水でももらってくるかね? それもガラスの容器を持って・・・。市販の家庭向け蒸留機の性能なんてわかったもんじゃない。プラスチック容器を使うなったって、お弁当持って行けないじゃないか。
私は今まで、健康に良い物を食べようと考えたこともなかった。しかし、例え考えていたとしても、動物の肉より魚がいい、とか、野菜を多く採る、といった従来の栄養価や基本成分を基準とした判断でしかない。
この本に出てくる魚は汚染されまくっており、子孫に障害をもたらす元凶だ。じゃぁ、畑の肉と言われる大豆でも食べるか? しかし、この本には出て来ないが、最近の遺伝子組み換えモンが混入しているかもしれない大豆なんて、安心して食えるか? 果物にしたって、アメリカの普通のスーパーで売っている物は、そういうことに比較的無頓着な私でさえゾッとするほどギトギトにワックスが塗られている。
脳に与える影響に関しては、主にアメリカの子どもの事例を述べている。多動症や注意力散漫、学習障害、記憶障害、異常な攻撃性やストレスに対する過剰反応。まさに日本のマスコミを賑わしている最近のガキ、そのものじゃないか。アメリカの高校生の学力テストの結果は、1963年をピークに下がり続けているそうだ。日本だって、時期的な遅れはあるかもしれないが、同じだろう。
愚かな人類が産みだした化学物質で子孫ができなくなるだけなら因果応報だろうが、やっとできた数少ないガキが馬鹿でキレやすいのばっかりなんて、これは無茶苦茶嫌だぞ。長生きしなくない。
私など、こうして半ば投げやりに自虐的に茶化して語れるが、もし自分に子どもがいたら、こんな風に言えるだろうか。
5年半前、日本を出る直前に、ある場で自分が語ったことを思い出した。世間にはロクでもない話や嫌になるようなニュースばかりが氾濫している。しかし、「だからと言って、立ち止まったり、生きていくのを止めてしまったりすることはできない」といったようなことを口にした。
当時、頭に浮かべていたのは政治的な話や民族問題、一般の(というのも変だが)環境破壊などだった。もちろん、これらの問題が重要であることに変わりはないだろう。しかし、こんな問題が小さく思えてしまうほど、この本は恐ろしかった。内分泌攪乱化学物質は、どの民族にも、独裁者にも、環境破壊を行う企業の重役にも、政治家にも、地球上の誰もに平等に蓄積しているそうだ。
地球上の全ての人がこの本を読んだとして、何か変わるだろうか? きっと、変わらない。大多数の人類は相変わらず愚かで、私は昼に汚染物質をたっぷり食べる。
それでも私には、生きていくのを止めてしまったりすることはできない。