マンハッタンはどうやら景気がいいらしい。アメリカ全体の景気がいいという話もあるが、マンハッタンの金融街もかなりのバブル状態のようだ。私は自慢じゃないが自宅にテレビがない。会社は日米の新聞を購読しているが、これも普段はほとんど読まない。逆に言えばメディアによるすり込みや受け売りがない。身の回りで聞く様々な話から、マンハッタンのバブルぶりを感じる。
私が今のアパートに引っ越したのは約一年前、当時でも「マンハッタンの家賃は何て高いんだ」と思ったが、それでもなんとか運良く800ドル以下の部屋を見つけた。床はほとんど見えないが、キングサイズ・ベッドや洗濯機、大きな机などが置けるだけ感謝すべきだろう。
現在、アパートを探している友人に聞いたところ、一週間足を棒にして探しまわっても、空いている一人向けの部屋自体がほとんどない。あっても、最初に見に来た人間が即決、選択の余地などない。しかも、ベッドを置いたらそれだけでいっぱいになってしまうような狭いワンルームでも、最低月に1500ドルは出さないとないのだそうだ。引っ越したのが一年前で良かった。マンハッタンにいる間は決して引っ越さないとの決意を新たにした。
一般にマンハッタンと呼ばれている、普通の人間が足を踏み入れるマンハッタン島内のエリアは、端から端まで歩いて行けるほど狭い。その狭い空間にオフィスや商店、アパートがぎっしり詰まっている。当然、オフィスの賃貸料も鰻登り。それでも、やはりすぐに埋まってしまうという。
一方、マンハッタンのオフィスを引き上げていく日系企業、特に金融機関の話も後を絶たない。あれここも、ほれここも、と、どんどん引き上げていく。単に今まで無用なオフィスに無用な金を使っていたという話もあるが、日本の景気が良くないことは間違いないだろう。
しかし、景気がいくら良くてもマンハッタンのインフラは全く良くならない。10分夕立が降ると池となって通れなくなる横断歩道、穴だらけの道路、滅茶苦茶な電話回線、変動の激しい電圧。ウォール街なんて、どうせどこも専用線を引いているから、一般の電話回線の品質が最低でも全く関係ないのだろう。我々一般人にとっては、元々高い物価がますます高くなるだけで全くいいことはない。うちの会社など主な顧客が日系企業だから、逆に不景気なくらいだ。
仕事で会ったリサーチ会社の社長によれば、マンハッタンの好景気のほとんどがウォール街によってもたらされている。景気が良いのは確かだが、一つの産業にあまりに依存しており、金融街の景気が悪くなった時に一気にマンハッタンが不況に陥る危うさを感じると語っていた。
先日、セミナーの予約をしようと案内の電子メールに書かれていたフリーダイヤルに電話をしたが、「この番号は使われておりません」のアナウンス。
しつこいようだがマンハッタンの電話回線は最低なので、途中でぶちぶち切れたり、シリコンバレー地区にかけた電話に必ずノイズが入るなんてのは序の口。正しい番号をダイヤルしているのに必ず違う番号にかかったり、他の地区からは問題なくかかるのにマンハッタンからは絶対にかからない番号もたくさんある。
この申し込み番号も運悪くマンハッタンからは絶対にかからない番号に当たってしまったのだが、他の番号も書いていなければ申込用のメールアドレスもない。案内はメーリング・リストを使って送られているので、送信アドレスにメールを出しても自動応答による返信メールが返ってくるだけだ。途方に暮れるとはまさにこのこと。
しつこいようだが、私はニューヨークが大嫌いだ。何が世界の大都会だ?! 電話一つまともにかからないくせに全米一高い電話料金取りやがって、笑わせてくれるぜ。
上記の社長は、ニューヨークが大好きらしい。
ニューヨークを嫌いな理由を彼に説明するなんて無意味なことはしない。プロ野球が好きな人に「どうして?」って聞いたって仕方ないし、私も「何でプロレスが好きなの?」と聞かれても困る。