98.4.19の独り言

無題の考察 その3

 手元に買ったばかりの一冊の本がある。私は最近、あまり本を買わない。読書自体は幼い頃から好きで、過去に読んだ本の数は人に負けないと思うが、ここのところ雑誌すら読む時間がなくて溜めている。しかし、この本だけは読みたくて、紀伊國屋で探した。「奪われし未来」。読んだ後でこのエッセーを書こうかとも思ったが、まだ読んでいない。読んだら、「無題の考察 その4」を書きたくなるかもしれない。

 相変わらず最近のガキの異常さ、特にナイフにまつわる事件を書いた文章をよく目にする。これらは、教育制度や学校、教師が悪い、いや家庭の教育が悪い、といった2つの論調が多くを占めているように見える。しかし、だ。一体、近代の日本で教育が良かった時代なんてあったのか?! 昔から悪かった教育が改悪され続けてきたことは否定しないが・・・。

 土に触れることなく育った子どもや、高層マンションなど地上から高い場所で育った子どもは、情緒不安定で攻撃的になりがちだという。さらに、ホルムアルデヒドに代表される有害化学物質だらけの内装で囲まれた、最近の密閉型住居。身の回りにあふれる有害周波数帯(主にマイクロ波=300MHz〜300GHz、パルス状波形のデジタル波がより危険という)の電磁波。大人でも体の不調を訴えたり、精神的に不安定になる。

 有害合成物質だらけの食べ物、過剰な抗菌・滅菌製品。お陰で、花粉症やアトピーに代表される、昔はなかったアレルギーが蔓延している。さらに今後は、遺伝子組み換え食品まで知らぬ間にどんどん食べさせられることになる。

 大気中にはダイオキシンがまき散らされ、土壌は汚染されている。

 公害が大きな社会問題になったのは高度成長期、この公害最盛期に育った世代を親に持つのが、今話題のナイフ世代だ。親の体内に蓄積した毒物を持って生まれ、最新の毒の中で育つ。

 自然界では野生の水棲ほ乳類が大量死し、ワニを初めとする生物の生殖器異常が大量発生。鳥たちは種保存の本能を失う。

 人間だって生物だ。最近のガキの脳に、遺伝子レベルの異常があったって何も不思議ではない。さらに後天的な環境要因で、情操が育たない。知能も感情も、構造自体が全く異なり、まるで別の生き物のような世代。

 すぐに「欧米では・・・」と言いたがる日本のマスコミ。しかし、アメリカにおける青少年のナイフや銃による事件が日本よりよほど多いことくらい、統計を見なくても想像がつくだろう。イギリスでは校内暴力やいじめの責任を取らされ、学校から永久追放(強制退学)される生徒数が急増(94〜95年度イングランド地区で12,458人。この数字を見ても多いのか少ないのかピンと来ないが、表面化している事件だけでもこんなにあると思えば、社会問題となっていることはわかる)している。先進国のガキは、みんな心を病んでいるのだ。いや、病んでいるならまだしも、それが新しい「典型的・平均的人類」であるかもしれない。

 随分と間があいてしまったが「無題の考察 その1」で触れた、77年の映画「The Child」。

ある島に観光に来た若い夫婦。妻は妊娠している。しかし、島の様子がおかしい。大人の姿がどこにもない。その島の子どもたちは、片っ端から大人を殺していた。映画の終盤、妻は自分のお腹の子に殺される。夫は、なんとか小舟で脱出を試みる。小舟に取りすがる子どもたちを振り払う夫は、本土からやってきた救助隊に子どもを殺そうとしていると誤解されて射殺される。島の子どもたちの狂気が本土の子どもたちにも転移することを示唆して映画は終わる。

 映画は、子どもたちが狂った原因について、何も語っていない。私が作者の意図を知る由もない。今、この映画が図らずも20年後を予言してしまったと感じるのは、私だけか。原因なら、現代社会のそこらじゅうに転がっている。


 ニューヨークの地下鉄は、ラッシュ時などは特にひどいものだ。乗客のマナーもひどいが、降りる人間すら降りきらないうちに平気でドアが閉まったりする。

 夜のすいた地下鉄で中年の男女が、ぼ〜っとしていたのかドアが閉まりかけた時に突然降りよう席を立ちドアに突進した。一人はなんとかホームに出たものの、連れが車内に取り残されてしまった。そこで、ホームに降りた方が無理矢理ドアの隙間に手をつっこみ、何とかドアをこじ開けようとした。そして、地下鉄は彼の手をドアにはさんだまま走り出した。

 この場合は、マナー違反なのは乗客の方だし、手だって抜こうと思えば抜けたのだが、本人たちはかなりあせっていた。何よりすごいのは、どこかのドアが半開きだとか、乗客の手がはさまっているとか、全く確認せずに走り出すシステムである。異常に気づいたのか10メートルほど走ってから地下鉄は突然停まり、おそらく車掌と運転手があぁ〜だこぉ〜だと車内電話で責任をなすりつけ合っている会話が車内放送で流れている。それで電車はしばらく立ち往生。真の原因をつきとめるとか、当事者に注意するとかいう様子は全くない。

 んなことしてる暇に10秒間、ドアを開けてやればそれで済むだろうが! 結局、その後ドアは一度も開かず、2人を引き裂いたまま地下鉄は走り出した。


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