98.4.10の独り言

 わかってはいることだが、楽しい時は一瞬にして過ぎ去ってしまい、またいつもの日常がやってくる。日頃から頭に来ることの多い日常ではあるが、非日常から戻ってきた直後には腹に据えかねたりする。


 先週の木曜日、徹夜明けだった私はかなり早めに空港に着き、搭乗券に書かれたゲートの椅子に座って爆睡していた。ふと目覚めると、出発予定時刻なのに搭乗が始まらないばかりか、キャンセル待ちにしては多すぎる人数がカウンターに列を作っている。「?????」。不安になり出発案内モニタを見に行くと、ナント私の乗るNorthWest 17便が2つもある・・・。

 私のチケットに書かれているのは10番ゲート、もう一つの12番ゲートの17便はすでに搭乗を開始している。どうやら、前日の17便が機体の故障でキャンセルになり、1つは臨時便らしい。私はもともと今日の便なのに、どうして臨時便と思われる10番ゲートが指定されているんだ?! 係員に聞いても要領を得ず、とにかく10番で待てというので待っていたが、10番の17便の出発が1時間遅いのがどう考えても許せない。私の日本での滞在時間は48時間ほどしかないのだ! 貴重な1時間なのだ!

「どうして私は初めから今日の便なのに、振り替えの客と一緒の便なのさ?!」。とにかく文句を言おうと思っただけなのだが、係員が急に真剣に人のチケットを見て他の係員を呼ぶ。呼ばれた彼は「早くおいで!」とトランシーバーで機内と連絡を取りながら私を12番に誘導していく。どうやら、私は(当たり前といえば当たり前なのだが)定刻通り出発の12番から乗るハズの客だったらしい。

「だから、さっきからそう言って質問してるのに、初めっから人の話をちゃんと聞いてよぉ〜!」
 まぁ、危ないとこだったが間に合ったからいいや。アメリカに住んでいると、この程度のことで責任や原因を追及したり、怒る気にならない。機内はすいていたし、予定より少し早く成田に着いたし、順調順調。

 最近、東京に着くと本当に天国かと思う。どうして乗り物がこんなに正確に動いているの? どうしてホテルの従業員は、命の恩人でもないのに客に対してあんなにていねいで親切で、深々と頭を下げるの? 今回は時間がなかったのでタクシーを何度か使ったが、タクシーの運転手さんも皆、超ていねいだった・・・。マンハッタンのタクシーの馬鹿運転手に爪の垢でも飲ませてやりたい!

 8分咲きの桜の淡いピンクや、街のあちこちで花咲き競う白や紅や黄色の、色とりどりの枝を広げる木々。6年ぶりの東京の春は、なんと美しいのだろう・・・。48時間はあまりにも短く、夢のように過ぎた。

 次の目的地はシアトル。東京の余韻にひたる間も、時差ボケする間もないスケジュールだったが、シアトル自体は比較的美しい街で悪くない。しかし、ホテルからネットへの接続の悪さには閉口した。ニューヨークに戻る時、何が嬉しいって、やっとデスクトップ・マシンで落ち着いてネットに接続できると思うと嬉しかった。

 出発の朝、少し早めにNorthWestのカウンタに着く。いきなり「ごめんね、このフライトはキャンセルされたから、今、他の便を探すね」、朝から食らった。・・・東京行きのキャンセル便は幸いにも一日ずれていたが、よく考えるとNorthWestってすごい航空会社だなぁ。ここ数年、改善されたと聞いていたが、やはりNorthWorstなのか。最初に探してくれたのが、私の大嫌いなUnitedの200便。「出発まで30分くらいしかないから、急いでね」ってあんた、誰も急いでるなんて言ってないだろぉ〜! 「なんで私が?!」と思いながら、空港の両端に位置するNorthWestのカウンタからUnitedまで荷物抱えて仕方なく走る。・・・が、Unitedのカウンタの前には長蛇の列。出発間際の便の客は優先的に手続きをしているようだったので、係員に「200便って何時に出るの?」と聞くが「そのまま並んでて」との返事。やっと私の順番が来たら、カウンタの兄ちゃん申し訳なさそうに「200便は3分前に飛び立ったんだよ」。自分で自分の顔の表情の変化がわかるほど、むっとする私。「心配しなくても、大丈夫。NorthWestに戻れば、また他の便を探してくれるよ」。誰も心配しとらんわい! 単に本気で頭に来てるだけじゃ!(Unitedが死ぬほど嫌いな私は、どっちかっつぅ〜と、NorthWestより「そのまま並んでて」とぬかしたUnitedの係員がむかつく)

 仕方なく、また空港の端から端まで、NorthWestのカウンタに戻る。今度は「Deltaがあるよ」。ふと見れば、Deltaのカウンタは隣じゃないか♪ おっけぇ〜、という訳でめでたくDeltaになる。機内はガラガラで3席使って眠れたし、まぁ良い旅であった・・・ニューヨークに着くまでは。

 到着したJFK空港は嵐。外に出ればタクシー乗り場に長蛇の列。タクシーもバスも来やしない。他のアメリカの都市なら、住人は絶対に車を持っているし、旅人はレンタカーを借りるだろう。友人に迎えを頼むことも、簡単だ。車で移動できないニューヨークなのに、どうしてJFK空港にマンハッタン行きの地下鉄なり列車なりが来ていないのだ?! どうしてバスの時刻表というものがないのだ?! 成田となんという違いか!

 タクシーが全く来ないのでバス乗り場に移動したが、バスもいつ来るかわからない上、乗り場は雨が吹き付けてくる。結局、雨に濡れないタクシー乗り場に戻って、さっきより後ろに並び直す。やっと列の先頭になった時、後方に並んでいたおっさんにマンハッタンまでの相乗りを頼まれ、気持ちはわかるのでOKするも、「タクシー乗るなり、機内食の残りを出してくちゃくちゃ食べるなぁ〜!」「もうちょっと上品にできんのか?! おやじ」。

 私はニューヨークが、心の底から嫌いだ。


 やっと自宅に帰り着き、荷物の片づけもままならぬ部屋の狭さに改めて憂鬱になり、キャンセルした商品代金が何故か引き落とされていることにムカつき、「あぁ・・・でも、やっとゆっくりネットに接続できる☆」と思った。

 繋がらない・・・。正確には、繋がるが何もできない。予備のプロバイダも同じ状態。前回のプロバイダ接続不可時は、接続自体ができなかったので電話代は取られなかった。今回は電話代だけ取られて何もできない。おそらく今度はプロバイダからバックボーンへの回線が死んでいるのだろう。せっかく帰って来たのに、予備の予備の従量制プロバイダで時間を気にしながらの接続しかできないなんて・・・。

 私はこの先、どこの国のどんな街に住もうとも、自分の住む街をニューヨークほど嫌いになることはない気がする。自分の街に対して、今ほどの嫌悪感と憎しみを抱くことは、絶対ないと思う。


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