97.12.27の独り言

 歯医者に行った。別に虫歯ではないのだ。ことの起こりは約2週間前。昼に弁当を食べていたら、おもむろに奥歯の金冠が取れた。そこで、先々週の金曜日に同僚が絶賛する会社のすぐ近くの歯医者に行った。

 先生は穏やかでにこやか、片言の日本語を話す韓国系のおじさん。助手は、弾丸のようにしゃべりまくる、超元気のいい名古屋出身のおねえさん。同僚が言うほど素晴らしいとは思わなかったが、まぁ感じのいい人たちだ。腕も決して悪くはないと思う。

 アメリカってのは、健康保険は自腹だ。会社が選択肢として用意していることもあるが、それでなくても初任給クラスで3割も天引きされる給料から(アメリカの税金は州によっても違うが、特にカリフォルニアやニューヨークでは非常に高い! 安いと誤解されがちなのは、きっと累進制が低いため高給になるほど割安になるからだろう)、さらに毎月何百ドルも保険料を払おうという独身者は少ない。おまけに、歯医者はさらに別料金のオプションになっていることがほとんど。私などは、歯医者には使えないが普通の医者は海外旅行者保険で済ませている。これが一番、安上がり。

 アメリカの診察料ってのも、何かしら基準はあるのだとは思うが、かなりいい加減だ。これがまた往々にして医師の腕と比例するから、どの辺で折り合いをつけるかが難しい。まぁ、普通に医者に行ったら、内科でも歯医者でも、百ドル札が複数、ひらひらと飛んで行くことは覚悟しなくてはならない。

 前回、件の歯医者に行った際、古い金冠をそのまま使うか、最近の流行り(?)の白いセメントにするか、聞かれた。できるだけ安く済ませたい私は「古いのでいいです」と言って元の金冠をそのままつけてもらった。ついでに、にこやかに片言の日本語で「歯の大掃除もね♪」と先生に言われ、断ることは不可能に近く、ドリルみたいな機材で歯のクリーニングまでしてもらってしまった。別にまぁ、悪いことじゃないからいぃ〜んだけどさ、たまにゃぁ〜歯のクリーニングもさ・・・。ついでに、「上の奥歯の金も危ないから、また来てチェックしましょうね。あら、この歯もブラッシングで削れちゃってるから、埋めないと」と助手の人に弾丸のように言われ、次回の予約を断れなかった(^^ゞ...。

 この時の治療費、助手の人曰く「先生がね、○○さんの紹介だから180ドルでいいって♪」。その180ドルってのが一体、安いのか高いのか、もちろん私にはわからない。多分、彼らにしかわからないだろう。同じ治療をしたって、医師によって全く値段が違うのだから・・・。

 金が取れたままにしておけないので初回は無理矢理行ったものの、年末進行で仕事が超多忙だったので、2回目は冬休み後。という訳でクリスマス明けの金曜日に出かけて行った。「で、今回は何でしたっけ?」。おいおい・・・人に無理矢理、予約を入れさせておいて、それはないだろぉ〜(^^ゞ...。「じゃぁ、今日は全部の歯のレントゲンを撮りましょう」・・・(うぅ・・・レントゲンって確か1枚、25ドルくらいするよな・・・何ぃ? 4枚撮るぅ〜?!)・・・「うん、歯は全部、きれいね♪」・・・(それだけのことを言われるために、100ドル札がぁ〜〜)・・・高まる血圧・・・。

 「上の金歯は、ひっかからないようにちょっと削っておくから」「じゃ、歯のお掃除もしておきましょうか♪」・・・(それって、前回と全く同じセリフやんけ(^◇^ゞ...)・・・「前はウルトラソニックでやったけど、今日は手で細かいことろのお掃除ね♪」・・・(人が良さそぉ〜な顔で片言でニコニコしながら言われ、返す言葉もない私)・・・もちろん、歯石取りは手動で先の尖った機材でコリコリやるのが一番いいのは知ってるさ。ま、別に悪いことじゃぁないんだけどね、もちろん(; ;...。

 「この、削れてる歯も埋めた方がいいですよ〜。こういうの、放っておくと、突然、折れちゃうから。長い間のブラッシングで、こうなっちゃう人って多いんですよね〜。今日は先生、お時間ありますよね。今、やった方がいいですよ」返事の隙を与えない勢いで話し続けるおねえさん。しかし、ここで一瞬の間をキャッチ! 「また、お金貯めたら来ます・・・」と哀し気に言う! 一瞬、表情が変わる先生とおねえさん。やった、勝った(^^...♪

 待合い室にやって来たおねえさん。「今日はね、先生が特別に100ドルでいいって」「こんなに安くしてくれることは、本当に珍しいのよねぇ〜」「今日、ついでに削れた歯の治療もすれば、きっとすごく安くしてくれたのに」(まだ言ってる(^^ゞ...)「本当に、こんなに安くていいなんて珍しい・・・」・・・はっはっは、勝ち誇った気分!

 「半年ごとにお掃除も兼ねて定期検診してね」「じゃぁ、この歯は半年後に治療しましょうか」「本当に気をつけてね」「私の知り合いで、やっぱり同じように削れた歯が、うどんを食べててポッキリ折れちゃった人がいるのよ」「早期発見が大事なのよ」「私の知り合いでも癌の早期発見で助かった人がいて・・・」なかなか止まらないおねえさんの話をやっと逃れて、「6月にお電話しますね〜」と明るく見送られて歯医者を出る。

 まぁ、年末だしね・・・歯の大掃除も悪くはないよね。合計、100ドル札3枚で済んだし(; ;...。


 マンハッタンの住宅事情の悪さは、もちろん医者にも当てはまる。ロスでは開業医でも、どぉ〜んと広いスペースに最新の機材を入れているところが多かった。こちら、何人もの医師が共同で 狭苦しいビルの一室を借り、一人あたりのスペースは4畳程度だったりして、本当に細々と頑張っているという雰囲気の医者が多い。

 全部の歯のレントゲンを撮ると言われた時、私はロスで撮られたような、椅子に座った患者の顔の回りをカメラが勝手にぐるりと一周して撮影するレントゲンを想像した。しかし、今回は局部レントゲンに使う小さな感光板を4枚使い、ちょっとずつずらして撮っていく、という原始的なやり方だった。

 なんだか涙ぐましくて、にくめない先生のキャラクターと合わせ、思わずこちらが「頑張って」と言いたくなってしまったのだった(^^ゞ...。(でも、私は貧乏だから治療費は安くしてね☆)


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