話はさかのぼり、私がまだロスに来て間もない頃、自然保護団体から寄付の依頼の手紙が来た。今では、こんなものは週に1通は来るのでほとんど無視しているが、当時は珍しかったし、自分がアメリカの住人として認められたようで嬉しかったので思わず寄付に応じてしまった。確か50ドルくらいだったと思うが、収入の低いアメリカでは50ドルは大金だ。その後、まず最初に「メンバーになってくれてありがとう」と言ってステッカーとロゴ入りのウェスト・ポーチが送られてきた。「私は別にウェスト・ポーチが欲しくて寄付したんじゃないわい!」「んなくだらないことに使う金があったら、もっと有意義に使えよ」と思って、かなりこの団体に対する見方が冷めてしまった。
さらに、こいつは金持ちだと思ったのか、差出人のラベルだのグリーティグ・カードだのカレンダーだの、次から次へと勝手な贈り物とともに寄付の依頼が届くようになった。年次会計報告書のようなものも送ってきた。確かに寄付金をちゃんと使っているらしいことはわかるが、厚紙のグラビアの非常に立派なカタログになっていて、こんなところに無駄な金遣うなよ!と、また思った。
他にも、差出人のラベルを送ってきて、寄付を募るダイレクト・メールはよく来る。ラベルの原価がいくらか知らないが、ここで寄付なんかしようものなら、もう次から次へといらないものが送られてくるんだろうな、と思うとゾっとして、とても寄付などする気にならない。
ところで、こちらの郵便局は、転送届けを出すと勝手にダイレクト・メール業者などに新しい住所を教える。このシステムって、一体、消費者に親切なんだろうか? 郵便局ってのは消費者が選択できない、独占サービスだ。それが、業者から金をもらって新住所を教えるなんて。電話帳に電話番号を載せない、発信人の電話番号を表示されないようにする、といったオプションが有料ながらもあるのだから、新住所を教えないという選択肢が何故ないのか。こうるさいアメリカ人なのに、プライバシーの侵害だ、などと誰も騒がないのが不思議だ。
そんな訳で、いくら引っ越しても業者の名簿から消えることができず、くだんの自然保護団体からも、以前ほど頻繁ではないが時々、勝手な贈り物とともに寄付の依頼が来る。前回書いた、買ってもいない商品代金の請求だって、肝心の商品は転送してこなかったくせに、転送届けが3度目の正直で受理された瞬間に業者に新住所を教えられてしまったから、請求だけがこちらに来る。商品も来ていれば、すかさず返品して何も問題はなかったのに、いい迷惑だ。
話は飛ぶが、ダイアナが死んだ瞬間に膨大な寄付金が集まったそうだ。世の中、なんてノー天気なヤツが多いんだ。金の遣い道に困ってるヤツが多いのか。ダイアナが生きている間に、彼女のファンだから彼女の好きに遣っていいよ、と寄付をするのならまだわかる(別にあんな大金持ちに寄付する必要ないと、個人的には思うけど)。死んだからって寄付して、それを一体、誰がどのように遣うかわかってるのか? そんな無責任な金の出し方、発展途上国の政府高官や有力者、大企業だけを潤して、公害まき散らし元々の住民を蹴散らしてるODAと変わらないじゃないか。
日本にいた頃、基本的に寄付はフォスター・プランだけにしようと思っていた。他にもまっとうな団体はあるだろうが、たまたまその理念を知る機会があり非常に納得できた、自分はいろいろなところに寄付できるほどの余裕はない、ということから、そう決めていた。くだんの団体も悪いことしてる訳ではないだろうが、寄付をしたばっかりにさらに無駄な金を遣われるような団体にはこれ以上、関わりたくない。精神衛生上よろしくない。さらに寄付したところで、マッチ・ポンプ状態に陥ってしまう。うかつに金は出すもんじゃないと思い知った。
ところで、先日、郵便受けに寄付の依頼がまた入っていた。Salvation Armyからだった。ロスのSalvation Armyには、使わなくなった衣料品や寝具などを何回か持って行ったことがある。貧しい人に感謝祭のごちそうを用意するために寄付して、と書いてあった。押し売り的な同封物はなく、グリーティング・カードに自分の名前をサインして寄付と一緒に送り返して、とあったのも何だか気に入った。ロスのSalvation Armyで、やっとここで仕事をみつけた、といった様子の黒人のお兄ちゃんが元気に働いていた姿も思い出した。ちょうど、自分の誕生日だった。「自分への誕生日プレゼントでいいじゃん」と思って、つい寄付してしまった。
さんざん、偉そうなことを書いておきながら、私も結構ノー天気かもしれない(^^ゞ...。
少し前にAOLの環境フォーラムのようなところに、「日本みたいな石鹸シャンプーとか、合成洗剤じゃない洗濯用粉石鹸の入手方法、知りませんか」と書き込んだことがあった。私は特に敏感肌という訳ではないが、こちらの合成洗剤は強烈で泡切れもひどく悪く、規定量の半分だけ使って3回すすいでも何だか体がかゆくなってくる。書き込みには、たいして役に立つ答えはなかったのだが、忘れた頃にDMで「僕がいい情報持ってるけど、興味ある?」というメールが来た。「良かったら教えて」と返事を出したら、「カタログを送ってあげるから住所を教えて」と書いて来た。
ここで自宅の住所を教えるほどお人良しではないので、「うちのポストは小さいから会社に送ってね」って会社の住所を書いて返事を出した。
すっかり忘れてたけど、そういえば以来、彼から何のコンタクトもないなぁ。どうせ、良からぬことを考えてたんだろう。ただ、普通のアメリカ人に私の名前から女であることは判断できないと思うので、無差別攻撃を狙っていたか、あるいはよくいる「日本人女大好き男」だったりして(^^ゞ...。