2001.11.23の独り言

 前回の独り言で、「どうぞ会場に鞄を持ち込めますように」と願ったCOMDEX。結論から言うと、厳戒態勢ながらも報道関係者は鞄は持ち込めた。しっかし、往きの道中、鞄がどうこうという以前に、そもそもラスベガスまで到達できないかもしれない・・・という事態に陥ってしまった。

 徴候はあったんである。11月に入ってから、車を運転していて「なんだか水温が高いな」と思うことがしばしばあった。ラスベガスに行く前に修理屋に見てもらおうか、とか、せめて水の量くらいはチェックしておこうと思っていた。しかし、何度も往復している、わずか4時間の距離のラスベガス。もう慣れきっていたというかナメきっていたというか、見事にそんなこと忘れて、出発してしまった。

 しばらく走ってから思い出したのだが、その時は不思議と水温は低かった。大丈夫じゃん、と安心し、ほぼ中間地点にあるBarstow(アウトレットが有名な、そこそこ大きな町)で給油。この時は、何も異常を感じていなかったのだが、ここを出て少し走ったところで唐突に「排気ガス高温」の警告ランプがついた。ふと気づけば、水温計の針は赤を振り切っている・・・。慌てて路側に止まる。

 どうして10分前に、給油する前にこうなってくれないかなあ、と思いつつも、悪いのは明らかに自分であることもわかっている。ボンネットを開けたけど、特に水蒸気が異常に吹き上げているわけでもなく、底を覗いても水も漏れていない(後から考えると、この時はすでに漏れるほどの水すら無くなっていた)。

 どうしようもないので、少し休んで再び走り出すも、一瞬にして警告ランプがつき、当然水温計の針も赤を振り切り、さらに今度はエンジンから明らかに異音がする。再び車を路側に停め、ボンネットを開けてエンジンを冷ます。ついさっき見た、パトカーが他の車を停めていた光景が頭に浮かぶ。きっとあのパトカーが停まってくれるに違いない、などと考えながら、夜空を見上げる。

 11月の日没は早く、午後6時前後だったと思うのだが、すでに真っ暗。連休前夜でもないので車通りも少ない。何しろ砂漠のド真ん中。車通りが途絶えると辺りは漆黒の闇になってしまう。満天の星空が実に綺麗であった(???)。・・・いやあ、しし座流星群でも見られたら良かったんだけどねぇ・・・

 しばらく待ったら、予想通りパトカーが停まってくれた。警官曰く、「レッカー呼んであげてもいいけど、高くつくよ」。アメリカ人は経済観念が発達しているので(要するにケチ)、こんな時でも、警官でも、そういうことを気にする。すっかりアメリカン(実は単なる貧乏)な私も、ここで「うぅ〜ん」と考える。警官によれば「ここから15マイル行くとガソリンスタンドが1軒ある。さらに15マイル行けば、Bakerに着く。ガソリンスタンドもたくさんあるし、ホテルもある」とのこと。

 私、「適当にエンジン冷まして、自力でガソリンスタンドまで行くわ」。というわけで、車の3列目の一番長いシートで寝ながらエンジンが冷えるのを待つことにする。横を車が通るたびに風圧で車体が揺れて、決して寝心地は良くない。暗いから雑誌読むわけにもいかず・・・

 そのうち、車の写真を撮ってみたりして・・・(面白くもなんともない写真だけど、見たい方はこちらでどうぞ)

 エンジンが冷めるまでに、約1時間。それから次にオーバーヒートするまで、走れる距離は6〜8マイル。ちょっと走っては1時間弱休み、を繰り返す・・・。いい加減やんなってくる。

 結局、ガソリンスタンドが1軒だけあると聞いた町は、夜が遅かったせいか真っ暗だったのでパス。夜の11時頃、ようやくBakerにたどり着いた。

 とりあえず水をもらおうにも、まったくもって情けないことに水を入れる容器すら積んでいない。ガソリンスタンドに併設されたコンビニの兄ちゃんに事情を話すも、彼はレジが忙しくてなかなか手が離せない。1時間半もぼけっと待たされた挙げ句、やっと水をもらい、再出発。

 普段なら4時間で着くラスベガスに11時間もかけて、夜中の2時頃に到着。顔を出そうと思っていた夜のイベントは、もちろんとっくの昔に終わってしまっていた。

 ホテルの駐車場に車を停めると、エンジンの下から滝のように流れ落ちる水。「あちゃ〜〜〜」。ラスベガスで修理するべきか悩んだが、自分がいるのはラスベガスの中でも、もろに観光エリアである。さらに今は、すべての物価が上がって毎年町全体がぼったくり状態になるCOMDEX開催期間。ラジエーターの修理はただでさえ高いのに、足下見られてふっかけられたらたまらない。かといって、居住エリアの修理屋も知らないし、探している時間もない。修理が1日で終わるかどうかもわからない。万が一、いい加減な修理をされても、文句を言うためだけにラスベガスまで来てられん。

 結局、自力で帰ることにする。車には、ガソリン用の予備タンクなら積んである。タンクを念入りに洗い、怪しまれぬよう(?)深夜のうちに水を入れて車に積んでおく。なんやかやで、4時過ぎにようやく眠り、翌朝は予定より遅く7時過ぎに起床。8時からのイベント会場まで3〜4キロの道のり、少し迷ったがタクシーに乗らずに早歩き。それでなくても今日1日遠足だというのに、朝からとばしてしまった・・・

 COMDEXは、厳戒態勢の様子が異様であった。また、大幅に規模を縮小したにもかかわらず、入場者が減った割合はさらに大きかったようで、初日からガラガラな展示フロアも異様。なんともCOMDEXじゃないみたいなCOMDEXであった。(厳戒態勢の様子にご興味がある方はこちらでどうぞ)

厳戒態勢といえば、あれ以来、(アメリカを象徴するだけに?)映画スタジオもかなりの厳戒態勢ぶり。マスコミ向けの試写会を自社スタジオ内の劇場を使って行う会社も多いのだが、以前は招待状を見せるだけでスタジオ内部に入れた。あれ以来、入り口で車の内部やトランク、会社によっては車の底部もチェック、招待状と身分証明の名前を見比べる会社もある。まったく面倒な世の中になったもんである。

 普段より会場面積は少ないものの、今年は現地滞在も1日と短かったので、大量に歩き回らねばならないことに変わりはない。夕方、ベンチに座ったら瞬間的に寝ちまったりして・・・

 夜のイベントも終わり、いよいよ帰路である。例のガソリン用予備タンクと、飲み終わった清涼飲料水のボトルにも水を入れ、ラジエーターを満水にしていざ出発。しっかし、ラスベガスの街を抜けるまでが大変。混んでるし、信号は長いし、きっとこの町中運転がよくなかったのだと思うが、30マイル程度走ったところで早々にオーバーヒートしてしまう。仕方なく車を路側に停めるも、往きのようにエンジンが冷めるのを1時間も待つ気にもならず。10分程度待って強引にラジエーターの蓋を開けて水を足す。(※よい子の皆さんは、真似をしないように)

 往きに給水したBakerで給油&給水しようと思っていたのだが、Bakerの手前20キロ以上続く緩い下り坂で、今度は「ガソリン残量わずか」の警告ランプが・・・。私の車は、上り坂だとガソリン残量(の目盛り)が増え、下り坂だと減る。下り坂のせいだとわかってはいても、状況が状況だけに「これでガス欠までしたらどうすんだよぉ〜〜〜!」と、実にドキドキしながらもどうにかBaker着。給油&ラジエーターもガソリン用予備タンクも飲料水のボトルも満水にする。オーバーヒートしていなければ、停車してすぐにラジエーターの蓋を開けてもどってことないということを知る。(※よい子の皆さんは、真似をしないように)

 ところで、この時の天候はといえば、大粒の雨が強風に乗って吹きつけてくる、という状態。例年、この時期この辺は風が強いことが多いのだが、11月に雨に降られたのは初めてかもしれない。給油給水中はくそ寒いし、走行中は横風で車体が揺れるし、(ワイパーブレードがぼろぼろだったこともあり)前は見えないし、濃霧が出ていた場所もあった。踏んだり蹴ったりというか、踏まれたり蹴られたり踵落としくらったりというか・・・(単に自分で勝手に転んでるって話もある)

 次は、60マイル先のBarstowで給水。高速走行のみだと大して漏れないようで、今度は水はほとんど減っていなかった。またまた強引に停車直後にラジエーターの蓋を開けたら、大量に残っていた水が噴水のように噴き出した。(※よい子の皆さんは、真似をしないように)

 今度は、ラジエーターもガソリン用予備タンクも飲料水のボトルも、さらにリザーブタンク(本来はちょっとしか水を入れるべきではない)まで「どうせ漏れてんだから、いいや!」と満水にする。(※よい子の皆さんは、真似をしないように)

 さて、Barstowから残り半分の道程。途中でもう1回くらい給水すべきか・・・? 郊外型フリーウェイ(?)の15号線から、ロサンゼルス中心部につながる10号線に乗り換える手前でかなり迷った。10号線に入ってしまうと、路側がなかったりあっても異様に狭かったり、交通量も多いだろうし、もしオーバーヒートしてもすぐには車を停められない。砂漠のド真ん中と違って高速からの降り口はたくさんあるものの、知らない街で夜中に車停めて作業するなんて、砂漠のド真ん中よりよっぽど怖い。・・・結局、水温も真ん中辺で安定しているし、Barstowで見た時に水はほとんど減っていなかったし、ということで、そのまま突っ走ることに。

 どうにか無事に家までたどり着き、1人拍手。約5時間で戻って来られた♪

 翌日、車を修理屋に持っていく。ウォーターポンプの交換、その他もろもろ、900ドルくらい取られた・・・。過去に(砂漠のド真ん中でオーバーヒートしたことこそないけど)自分の車のウォーターポンプを交換した(してもらった)こと、3回(3台)くらいある。いつも古い車ばっか乗ってるからだろ、って話もあるけど・・・。それにしても、あんなもの絶対にダメになるんだから、他の消耗部品みたいに本格的に穴開く前に交換するような仕組み(例えば、MPVの場合、タイミングベルトなら6万マイルで交換、みたいな)にしてほしいよな。そうすれば、余分な出費も時間の浪費もしないで済む。

 ・・・まあ今回は、前兆がありながら忘れてそのまま砂漠に突っ込んで行った私が、全面的に悪いのだけれど・・・

 とある友人にこの話をしたら、「来年はきっといいことあるよ」と言われてしまった。もちろん悪気があって言っているわけではないので怒るわけにもいかないのだが、なんかえらいムッとした。勝手に人の今年を「やな年」にするな! 今年は元旦からいいことたくさんあったし、今年はついてないなんて思ったこと、一度もない。そらもちろん今年もいろんなことがあったけど、いいことも悪いことも毎年たくさんある。そもそも「砂漠のド真ん中でオーバーヒート」なんて、その時はちょっと大変だけど、終わってみれば笑い話のネタというか武勇伝というか、ほとんど自慢話みたいなもんじゃないか。そんなことで「やな年」だと思うような、静かなというか何のアクシデントもないつまらん人生なんて、いらねーよ!


 こういう話は、体験した直後に書いたほうが臨場感もあってもっと面白くなるのだけれど、この10日ほど書く時間がなかった。単発の仕事がばしばし入って、この怠惰な私が連日早起き取材を余儀なくされたりして、泣きそうだった。オーバーヒートしたこと、なんだかかなり前の出来事のような気がしながら書いていた。

 しかし、明日からまた怒濤のごとく仕事が襲ってくるらしい・・・。来週以降、立て続けに遠征(出張と言えよ!)も入りそうである。

 まあ、仕事したくてもできない人が少なくないこのご時世。商売繁盛で喜ばないとねぇ・・・


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