アメリカの年末は、例年、10月から始まる。10月になれば街全体がハロウィーン一色、それが終わればサンクスギビング、さらにそれが終わればクリスマス。10月から一気に怒濤のごとく年末モードに入っていく。
しかし、今年は少々、事情が異なるようである。
何より驚いたのは、郵便局がすいていること! すいているという話は聞いていたが、これほどとは・・・。普段から、郵便局の窓口の前にはいつもいつもいつも長い列。ましてや11月12月はホリデーシーズン。例年なら、いつにも増して列が長くなる時期である。
それなのに、木曜日の午後の郵便局はがらがら。列に並んでいるのは、わずか2人。待ち時間1分弱。・・・ありゃりゃ・・・という感じである。人々の中に郵便物に対する恐怖があるのだろう、ということはわかるんだけど、だからって郵便局を利用しないで済むようにできるものなのか? 怖いからって、郵便局に行く用事をなくせるものなのか・・・???
窓口の職員には、ゴム手袋をしている人としていない人がいる。マスクをしている人はいなかった。私の応対に当たったのは、普段からよく窓口で見かける、たぶん50前後のおじさん。ゴム手袋をしている。で、このおじさん、とてつもなく低い声でささやくように話しかけてきた・・・
こういう応対をされたら印象に残るはずなので、きっと今までの彼は普通にしゃべっていたのだと思う。しかしこの日の彼は、できるだけ空気を吸い込まないようにしているのか、空気を動かさないようにしているのか、単に喉を痛めていたのか知らないが、何を言っているのか非常に聞き取りにくい。
しかも2言目に「Are you having good days?」とか、いきなり妙なことを(もちろん、ささやくようなというか、今にも死にそうな声で)聞くもんだから、思わず顔を近づけて「え?!」と聞き返してしまった・・・。このセリフ、なにやら妙に宗教がかって聞こえた(「幸せですか?」とか聞く宗教の勧誘って、日本の街頭でよく見かけるよね?)。動きもなんだかえらくスローだし、顔も穏やかというのか、生気がないというのか、強いて例えると観音像みたいである。炭疽菌にやられる前に精神をやられてしまったのではないかと、ちょっと心配してしまった。
まあ、郵便局員にしてみたら怖いと思うよ、実際。頭おかしくなるくらい。
高速道路上には、トレーラーや大型トラックがやたらと多い。LAダウンタウンの周辺でも、終日、「ここはロングビーチか?!」と思うほどトレーラーだらけ。多くの会社が空輸をやめて陸送に変えている、ということなのだろうか?
※ロングビーチ港は、LA近郊にある、全米一の貿易港
陸送が増えたせいなのか、単なる年末モードなのか、わからないが、11月に入ってから交通渋滞が本当にひどい。幸い朝の渋滞の時間帯は大抵寝ている私だが、週に3日は夕方の渋滞にはまっている。9月までは30分で行けた場所に同じ時間帯に行くのに1時間はかかる。皆、渋滞でいらいらしたり、あせっているせいか、事故も非常に多い。高速道路を使う2回に1回は事故渋滞にもはまっている。「ただでさえ混んでるのに、頼むから事故るなよ!」
LAの空港(LAX)は相変わらず一般車両の乗り入れ禁止。てっきり全米どこの空港もそうなのだと思っていたら、どうやら違うらしい。LAXは過去にテロに狙われたことがあるので、DCの空港と並ぶ警戒ぶりなのだとか。
かくして、21世紀の最初の年が暮れてゆく・・・
最近観た映画の中でテロリストが、世界中で毎日理由もなく膨大な数の人間が死んでる、というようなことを言っていた。だからってテロを正当化する理由にはならないのだが、でもそれも事実である。
今回関係していると思われる中近東エリアだけでも、アメリカが経済封鎖した上にさんざん空爆してきたイラクで、疲弊しきったアフガニスタンで、子どもを含む何万人もの人が日々、死んでるんじゃないのか? 先進国の人間が殺されたら大問題で、発展途上国の人間なら死んでも構わないのか?
「罪のない人」が死んでいく、とかよく言うけど、そもそも「罪がある」とか「罪がない」とか、誰が決めるんだよ?
今回のテロで亡くなった方々に哀悼の意を表する。病気や火事、交通事故など、テロ以外の理由で亡くなった方々に対するのと同様に。
「アメリカに帰るのが怖くないか?」と聞いた友人がいたが、何が怖いのかよくわからない。歌舞伎町のピンサロにいたって、火事で死んじゃう人もいる。
前からブッシュは嫌いだが、今はもっと、大嫌いである。しかし、タリバンはさらに嫌い。もちろん、ビンラディンをかくまっているからではない。
多くの人は、積極的に「生きたい!」というより、単に「死にたくない」だけなのではないかと思う。この先の人生が楽しいのか地獄なのかわからなくても、とりあえず生き続けるのが一番楽である。死ぬのは非常に怖い。
・・・できるだけ、正義感とか義憤とか感じないようにして、目の前の日々を楽しく生きたいと思う。
そんな私の当面の願いは、COMDEXの会場に鞄を持ち込めますように、である・・・