2001.9.29の独り言

 8月にぐらぐらになり歯医者に診せに行った時に取れてしまった、7年前にインプラントした義歯。抜けた跡の骨に開いた穴を埋める手術を受けた。

 行く前は実に軽い気分だった。テロ直後にしばし仕事が止まってしまった余波などで、9月20日頃から実は結構忙しい。手術当日も、続く日々も、ごく普通に生活できるものとして、仕事他もろもろの予定を立てていた。

 10年以上、断続的に私を悩ませているこの歯(実際にはもう歯はないけど)。9年ほど前に日本で、歯茎の皮膚をはがして歯の根本だか歯茎の骨だかをごりごりやる(?)手術を受けたこともある。この時は、手術後に痛かった記憶もなく、実にあっさりと歯茎は通常に戻った気がする。7年前にインプラントの支柱を歯茎の骨に埋め込む手術をした時も、あまり苦しんだ記憶がない。そんなことを漠然と思い浮かべながら、どってことない気分で歯医者に向かった。

 これは大きな間違いだった。7年前にどうしようもなくなって歯を抜いた直後の死にそうに苦しんだ期間を思い出しておくべきだった。

 手術中は、最初の麻酔の注射の不快ささえ我慢すれば、あとは麻酔が効いているので何も感じない。歯茎を切り開いて、骨の穴の内側をごりごり削ってきれいにし、白いセメントのような骨の素(?)を詰め込み、人工皮膚のようなもので蓋をし、皮膚を引っ張って縫う。医師が専門の器具を使って歯茎に器用に糸を通して結んでいく様子を、見える範囲を目で追ったり、音や感覚で推測したりしながら、「歯茎も糸で縫うものなのだなあ」と、変なところに感心していた。

 24時間は口をゆすいではいけないと言われ(多分、前も言われたのだろうが、ちっとも記憶にない)、「口の中が血だらけで気持ち悪いなあ、早くうちに帰ってせめて何か飲みたいなあ」などと考えながら、「私は丈夫だし、まず問題なく回復するに違いない」という根拠薄弱な理由により処方箋薬も買わずに帰ってきた(処方箋薬は高い、という現実的な問題も、ちらりと頭をかすめた)。

 最初のうちはまだ麻酔が効いているので、飲み物を入れたコップに口をつけてもうまく飲めない。仕方なくストローで飲む。数時間経って麻酔が切れかけてくると、舌や唇がちりちりする感覚と少しずつ増してくる患部の痛みが相まって、実に不快。こういう時は寝て過ごすのが一番なのだろうが、あいにくこの日は昼近くまで寝てしまった。大失敗である。

 私は仕事が忙しくなってくると、一晩おきに徹夜することが多い。手術の日の夜は、順番からして徹夜仕事をする日にあたっていた。前夜は爆睡する順番の夜だったので、2日分寝たからというわけでもないが、昼まで起きなかったのだ。ほんっと〜〜〜に大失敗。前夜は徹夜でもしておいて、歯医者から帰ってきて即座に爆睡できる状態にしておくべきだった・・・

 頭が働きさえすれば、眠れない夜は仕事がはかどってちょうどいい。しかし、不快さと痛みでちっとも頭が働かない。最悪。

ついでに、健康な時でもせっぱ詰まった仕事がない時に限って、眠れなくなる。忙しい時に限って、馬鹿みたいにすぐに眠くなる。どう考えても、仕事をしたくないという深層心理が眠気を発しているとしか思えない。仕事が一段落した日など、現実逃避したいがための睡魔が襲ってこないので遅い時間になっても妙に目が冴えている。

 その後数日間は、顔面半分昔の宍戸錠になる。痛い、口が開かない、しゃべれない、寝ても熟睡できずに短時間で目が覚めてしまう。集中力がなく、キーボードをたたいてもミスタッチ連発。パソコンに向かっている時間は長いものの、まったく使い物にならず。

 3日目に勇気を出して(?)そーっと口を開けて、鏡で患部を見てみた。詰め物をしたために歯茎の骨が盛り上がっており、傷口を完全にカバーするには皮膚の面積が足りない。縫ったといっても両側の皮膚を引っ張って止めているだけであることを知る。傷口の上を糸が横断している状態といえば、わかってもらえるだろうか。歯茎は脳に近いし、これはまあ痛みもするわな。

 さらに今回は、首筋から肩、背中にかけて、がぢがぢに張ってというか凝ってしまい、これがまた傷口の痛みに負けないくらいつらい。歯医者でもらったパンフレットにもこうした症状が起こり得ると書いてあったし、私は普段は左側が凝りやすいのに手術を受けた右側のみが凝っているので、原因はやはり手術なのだろう。

 3〜4カ月後、骨の素がしっかり骨と一体化して(???)骨の穴がちゃんと塞がっていたら、今度は新しい支柱を埋め込む手術である。この時は、絶対に短時間睡眠、もしくは徹夜明けで歯医者に行き、帰ってきたら爆睡してやる!と、堅く心に誓っている。

 ところで、自宅も会社もワールドトレードセンターと至近距離にある友達から、手術の直後に電話がかかってきた。2週間もの間、自宅も会社も立ち入り禁止だったそうで、私が送った安否を気遣う電子メールを今頃読んだとか。テロについてしゃべっているうちに、話題が細菌戦におよぶ。天然痘ウイルスがどうのとか、鼻と口さえ塞げばいいのか?とか、傷口があると感染しやすいとか、しょうもない話をしばし続ける。彼曰く「(歯茎に大きな傷口がぱっくり開いている今の私は)細菌ばら撒かれたら真っ先に死んじゃうね、ははは」。・・・・・。ほっといてくれ・・・。あんたと長話したお陰で、歯茎の痛みが増したわい。


 この15年くらい、テレビをほとんど見ない生活をしている。テレビを録画したビデオを含めても、近年見るテレビ番組は報道系と格闘技系、せいぜいたまにドキュメンタリー。音楽番組や芸能番組(バラエティ?)を頻繁に見ていたのは中学時代が最後。だから私は、日米問わず、最近の芸能人や歌手の顔をあまり知らない。

 先週の金曜日、たまたま行ったバーのテレビは「America: A Tribute to Heroes」を流していた。日本でもフジテレビが生放送したらしい、米4大ネットワークが史上初めて共同で制作した、同時多発テロの被害者のための募金を集めるチャリティー番組だ。

 有名人が次々と出てくるので、飲みながら熱心に見てしまった。

 映画俳優の多くは最近の姿も見ているのだが、大御所歌手に関しては10年から15年ぶりに見る人が少なくなかった。なんか、ちょっとというか、かなりというか、感慨深かった。オールスターというか、オールドスターというか・・・みたいな・・・

 スティングって昔は格好良かったのに、とか、目がやたらと小さくて眠そうな顔した(歌手じゃないけど久々に見る)ロビン・ウィリアムス、これじゃただのじいさんだな、とか、いろいろ思ったけれど、なんといってもビリー・ジョエル! あの変貌ぶりには、驚き過ぎて言葉を失ってしまった。年取ったとかなんとかじゃなくて、こりゃ別人だろ?・・・と思ってしまった。

 時って、流れていってしまうものなんだよな・・・


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