2000.6.14の独り言

 全体的に時間の余裕はあっても、引っ越し直後は何かとばたばたしていた。6月に入り、こちらでの生活のペースができつつある。それは「振り出しに戻ったような生活」・・・である。

 93年2月にロサンゼルスにやってきた時は、仕事もビザも学校も知り合いも何もない状態だった。最初の5ヶ月は、車すらなかった。毎日、たいしてすることもなく、バスや徒歩でビーチに行って、ローラーブレードしたり浜辺で寝ころんだり散歩したり。(今考えると、当時でもいい加減いい歳だったのに、よくそんな生活してたよな)

 とりあえずテレビを買いに行き、「配達代がもったいないから担いで帰る」と言い張り、見かねた店員の兄ちゃんが店を抜け出して自分の車で運んでくれた、なんてこともあった。(これも今考えると、すごい話であるな)

 夕方、ほとんど暇つぶしに公営の英語学校(確か授業料は1学期50セントだったか1ドルだったか)に行く以外、別に用事もないので、毎日それはそれはよく寝ていた。

 ここしばらく、申し訳ないほどに(?)よく寝ている。脳味噌が溶けないか、心配である。

 週に2回くらいはビーチに行く。平日の午前中、繁華街よりかなり北の、人影まばらなビーチ。駐車場はタダ。折り畳み式のビニールのベッドと雑誌を担いで波打ち際の近くまで歩いて行き、寝転がって雑誌を読んだり目をつぶったり景色をぼ〜っと眺めたり。大抵は半径100メートル誰もいないので、波の音風の音しか聞こえない。日差しは強いが海風がとてつもなく冷たいので、汗ひとつかかない。別にのども渇かないので、飲み物なんて余分な荷物になるものは持って行かない。

 映画も、週に1回は観よう。平日の夕方の一番安い時間に。マンハッタンの映画館は高いし、そのくせ多くは狭くて汚い。夕方の割引上映すらない。車で移動できないから、会社か自宅かどっちかの近くの映画館じゃないと行きにくい。そのうちあまり映画を観に行かなくなってしまった。これからはまた、たくさん映画を観るんだ。

 根が貧乏性なんで、「本当にこんなことしてていいのだろうか?」と不安になったりもする。しかし、今までと同じだけの仕事はしている。ただ「会社に行く」という、とてつもなく無駄で不快な時間の浪費がなくなったのである。

 「こんな生活がしたかったのか?」「そう、したかったんだよ、すごく」「高い家賃払うためだけに働いてるみたいで、毎日時間に追われて、出勤は苦痛以外の何物でもなくて、何のために生きてるのかわからなかったじゃない」「週末は、足の踏み場もないほど狭い、昼間も電気が必要な光の入らないアパートの部屋で、ただ寝てるだけ」「記憶がなくなるほど飲んで、帰りのバスをいつも寝過ごして、それでストレスが発散されたのか?」

 やろうと思えば、今までの3倍くらいの仕事は軽くこなせる。だけど今は、何をするのも面倒だ。しばらくは、のんびり暮らそう。4年に一度くらい、こういう時期があってもいいじゃん。

 「こんな生活がしたかったのか?」「そう、したかったんだよ、すごく」

 人間って、思い出したくないことは本当に記憶から消し去ろうとするものなんだと、よくわかった。ニューヨークに住んでいた時のことは、よく覚えてない。


 前回も話題にした記念すべき第1回在外選挙。在米日本人向けのテレビ番組でも何度か取り上げられていた。

 最初に選挙人登録をする際には在外公館に必ず本人が出向かなければならないとか、アメリカではハワイ、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコといった日本人が多く住む地区の領事館で在外公館投票を実施していないとか、確かに不便きわまりない。番組内で「投票するな、というようなシステム」「仏作って魂入れず」とコメントしていたジャーナリストがいたが、まったくその通りである。

 ところで、5月の終わりに選挙人登録住所の変更と投票用紙の請求を同時に行った私の場合。

 投票用紙請求の受け付け開始は、解散した日、すなわち6月2日の金曜日。私の書類は6月2日より前に、私が登録している自治体の選管に届いていてようだ。準備万端整えて解散を待って速攻で投函した、という感じで、投票用紙は2日消印のEMS便(国際速達便?)で5日の月曜日に私の手元に届いた。選管もなかなか気合い入れてるじゃん、と、ちょっと感動した。

 どのみち比例区にしか投票できないので、公示を待たずに投票用紙を返送した。時間的に余裕があったので、普通の航空便で送った。

 ところで、これも在米日本人向けテレビでやっていたのだが、投票用紙は信書なので郵便でしか送れないのだそうだ。FedExとかDHLで送ったらダメなんだって。これにはもう「うっわぁ〜〜〜、お役所〜〜〜」って感じである。誰かが知らずに(あるいは郵便事情が非常に悪い地区に住んでいるため)FedExなど送った投票用紙は、破棄されてしまうのだろうか・・・?


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