「無料雑誌、百花繚乱」

 「ウェブサイトの閲覧は無料、運営費は広告で稼ぐ」というのは、よほど付加価値が高かったり特殊な情報が掲載されていない限り、「インターネットの既成事実」になっている。

 ところで、アメリカには無料の雑誌がそれこそ星の数ほどある。今の仕事に就いた直後は、やっとアメリカで一人前と認められたようで嬉しく、無料購読の申込用紙を手に入れると片っ端から記入して返送していた。しばし同じ会社に所属し、コンベンションで名刺ばらまいたり、資料請求なんかする。私の名前は(それこそ、いろんな綴りで! 参照)ありとあらゆる名簿業者に片っ端から登録されてゆく。

 たとえ無料でも、いらないものはいらない。最初は嬉しかったが、だんだんうっとうしくなってくる。毎日のように届く雑誌。もちろん読みきれるはずもなく、積み重なっていく。どんどん、邪魔になる。ここ半年ばかり、どの雑誌も購読の継続手続きをしていない。最近は届く雑誌の種類も多少減った。

 勧誘もすごい。毎日のように無料購読の申込書が送られてくる。これは捨てればいい。「○×の無料購読に興味ない?」と、電話までかかってくる。これは真剣に勘弁して欲しい。

 購読を申し込む場合、七面倒くさい質問に答えなければならない。会社の規模や業務内容、既に所有している機器とか、機器の種類ごとの購入予定やら予算やら、紙の申込用紙の選択肢にチェックを入れるだけでもかなり面倒だ。最近は多くの雑誌がウェブでも手続きできる。おそらく、契約期間や質問内容を定めた法律があるのだろう。どの雑誌も聞かれる内容と1回の回答で得られる無料購読期間はほぼ同じ。さらに、契約更新の度にまた同じ面倒な回答を要求される。それを電話で延々と聞かれると、途中で「もういい。購読やめる」と言いたくなってくる。こんなことをしている間に重要な電話が入ってたりして、後で知ると本当に嫌になる。一日中、電話でアンケートを読み上げてる担当者も気の毒だ。

 もちろん、断ればいいのだ。しかし最近は雑誌の数も減ったし一冊くらい増えてもいいかと、先日うかつにも電話での申し込みに応じてしまった。途中で泣きたくなってきた。ひどく後悔した。

 送られてくる雑誌は、大判の中綴じのものからA4程度の中綴じや平綴じのものなど、さまざま。どれも、それなりに金のかかった作りになっている。(写真参照。30センチ物差しと、日々無料で届く雑誌の一部。もちろん写っているのはすべて違う雑誌。あまりいないとは思うが、拡大画像を見たい人は写真をクリック)

 日本でも、あるいはアメリカ以外の国でも、こういった無料雑誌はたくさんあるのだろうか?

 「閲覧無料、広告収入で運営」というスタイルは、アメリカでは既に紙媒体で超メジャーな手法なのだ。どんなに手の込んだウェブサイトだって、紙媒体の発行と比べれば手間暇も資金も格段にかからない。しかし紙媒体ってのは、相手が読もうが放置しようが読まずに捨てようが、送りつけてしまえば購読者数として数えられる。ウェブサイトにトラフィックを誘導するより、はるかにてっとり早い。

 「ウェブは儲からない」と言われて久しい。物珍しさからあちこちのサイトを放浪する初心者ユーザーが減り、決まったサイトしか訪れない熟練ユーザーは確実に増えてくる。アクセスは、一部の有力サイトにどんどん集約されていくだろう。

 これらの無料雑誌がどの程度、儲かっているのか知らない。しかし、ウェブで同じことをやっても儲からないことだけは明らかだ。どんなにインターネットが普及しようとも、(少なくともアメリカでは)紙媒体は滅びず・・・。

(1999.3.3)