「郵便局の馬鹿」

 別に郵便局に限らないが、アメリカ人はちょっと頭を使う、とか、常識から判断する、ということをしない。性能の悪い自動仕分け装置みたいなもんなんである。

 以前、日本から友人が3ヶ月ほどニューヨークに短期留学で来ていた。彼女は日本の友人に葉書を出した。しかし、その葉書が自分のところに戻ってきてしまった、どうしてだろうか、と相談された。見ると、左半分に手紙の本文、右半分の上側に宛先の日本の住所、下側に自分が滞在しているホテルの住所が書かれていた。

 アメリカでは通常、左上に差出人の住所、宛先はど真ん中か少し下、左右に寄っていることもあるが、確かに宛先の方が下側であることは間違いない。

 アメリカの切手が貼られ、「Air Mail」と書かれ、切手代だって航空便の値段で、住所の片方が近所で片方が日本だったら、普通日本宛てだということくらいわかるだろう。しかし、アメリカの郵便屋は性能の悪い自動仕分け装置みたいなものなので、彼女のところに戻ってきてしまった訳だ。

 その同じ葉書、宛先を枠か何かで囲み、大きく「TO」と書いて目立たせて再度投函しなさい、というのが私のアドバイス。今度はちゃんと日本に届いたようだ。切手を貼り直さなくても、そのまま行ってしまうところが、アメリカのすごいところでもある。そういえば以前、同僚が日本あての郵便物に切手を貼るのを忘れて投函してしまった、と慌てていた。内容は書籍数冊で結構、重そうだ。ところが数日後、日本から無事届いたと連絡が来たそうだ。同僚は半ば呆れながら安堵していた。

 先日、誤って届いた通販の品物を返品するために、小荷物に返品用のラベルを貼って投函した。ラベルには「FROM」に私の住所、「TO」に業者の住所があらかじめ印刷してある。確かに文字は小さいが、ちゃんと「TO」の方が右側だ。しかし、「FROM」の私の住所の方が真ん中に近くなってしまったので、投函するときちょっとだけ嫌な予感はした。案の定、その荷物は翌日うちのポストに詰め込まれていた。「TO」の業者の住所を大きく囲み、でっかく「TO」とマジックで書き、そのまま再度投函。今度は戻ってこなかった。

 日本の友人から「送った」と連絡のあったMO。しかし、なかなか届かない。モノがMOなだけに、「税関で引っかかったのか? しかし、Hモノを疑われるのは普通アメリカ発日本宛であって、逆だろう」などと心配していた。

 やっと届いたモノを見て、全て納得。宛先が上に書いてあるのだ。しかし、宛先の文字の方が随分大きくて中央に近い。誰がどう見ても普通は間違いそうにない。しかも、だ。一体どいういうシステムで種分けをしていれば、日本から日本の切手が貼られてアメリカに航空便として届いたものを、「これは日本宛ての荷物だ」と判断して再度日本に送り返すという行為に及ぶことができるのか?! 全く理解できない。

 こういったことはよくあるようで、封筒には日本の税関(空港郵便局?)の「これは、あんたの国宛ての荷物だよ」というラベルが差出人住所を隠すように(なんという日本的配慮!)貼られ、丁寧に赤マジックで宛先に下線が引かれ、さらに「TO USA」と書かれていた。このMOは日米間を一往復半もしたのだなぁ・・・と思い、妙に愛しさが沸いてしまったのであった。

 一方、変な位置に差出人が書いてあっても届くことがある。その理由を、ほぼ同時に届いた2つの荷物を見て確信した。2つとも左上に受取人である私の住所氏名、見事に真ん中下あたりに差出人の住所氏名が書いてあったが、ちゃんと届いた。それは、差出人の住所氏名が日本語で書いてあるからである! 日本語は読めないから、差出人だろうと受取人だろうと、とりあえず読める住所に届けてきたのである。

#皆さんも、日本からアメリカに郵便物を送るときは、差出人住所氏名を日本語で書きましょう☆

(1998.3.27)