「きれいの概念」

 日本人は世界でもかなりきれい好きな人種だと思う。

 アメリカでは、ご存じのように土足で部屋に入る。しかし、アメリカの住宅街の道路や公園の芝生というのは、これでもか、というほど犬の糞が落ちている。わざと踏まなくても、間違って踏んでしまったり、かけらになって踏んでも気付かないこともあるだろう。路上に落ちて腐った生ゴミ、その他・・・も同様。その汚い靴の裏で自分の部屋に入り、時には同じ床を裸足でも歩く。その床に座ったりもする。家の中も外も一緒である。もっと嫌なのが、靴のまま平気で机や椅子に足をあげたり、ひどい場合はベッドにまで靴のままあがる・・・。これだけは100年アメリカに住んでも馴染めそうにない。

 以前、通っていたスポーツ・ジム。日本では、まずジム内に入るのに室内用のスニーカーにはきかえ、ストレッチなどをするマットの上では、その靴さえ脱いでいた。ロスでも何回かジムに行った。通常のトレーニングはもちろん土足、さらにマットの上まで土足であがりストレッチをしている。汚い土足の靴の裏を触ったり、顔を寄せるようなことも全く平気だ。

 あるホームページで、アメリカ人の68%はトイレから出ても手を洗わないと知った。どうりで飲食店のトイレに行くと、「従業員はトイレから出る時は必ず手を洗うこと」と貼り紙がしてある訳だ。コインランドリーに行くと、目で見てわかるほどきたなく汚れた洗濯機の蓋の上に、洗ったばかりの衣類を平気で置く人がほとんどだ。

 私は、自分の部屋では靴を脱ぐための玄関エリアを作り、そこから先には絶対に土足で入らない。工事などで他人が土足で入ってくることが避けられない場合は、彼らが帰った後ですかさず念入りに掃除をする。

 ところで、うちのアパートの大家さんは中国人だ。ある時、彼女が内装工事の職人を連れてきた。職人も中国人だったが、彼は私が裸足で室内にいるのを見て、すかさず靴を脱いで部屋に入ってきた。こんなことはアメリカに来て初めてだった。本当に感動した。やっぱり私はオリエンタルが大好きだ。

 それにしても、あんなにいつも靴を履いていて、アメリカ人の足って臭そぉ〜。

(原文:1997/8/3 加筆訂正:98/11)