「ニューヨークの地下鉄」

 ニューヨークには地下鉄がたくさん走っている。一見、便利そうだが、実はとんでもない。

 まず、時間が滅茶苦茶。時刻表なんてものは初めからないので、来なくても文句の言いようがない。おまけにいつもどこか工事中で、急行に乗ったハズが突然鈍行になるのはまだしも、勝手に駅を飛ばされることもしばしば。車掌が希に親切な人だとていねいにアナウンスされるので対応できるが、ひどい時など既に前の駅を発車した後で「次は停まらないよ」なんてアナウンスがある。誰かスケジュール管理とかしてるのか?

 朝の混雑時には、降りる人間が半分も降りないうちにドアを閉めたりするくせに、いつまでもドアが閉まらずに停まっていたりもする。

 構内への入り口も時間によって開いていたり閉まっていたりする。ラッシュ時には全部開ける、というのならわかりやすいが、「ここは午前中は閉鎖」「こっちは夜は閉鎖」「あそこは昼間は閉鎖」など、慣れないと全然わからない。ただでさえ初心者にはわかりずらい地下鉄の入り口なのに、「地図だとこの辺に入り口があるハズなのに?」ということもしばしばあった。

 内部もかなりキテいる。椅子はもちろんプラスチックのベンチのようなものだし、窓には削って書かれた落書き。シートに食べ物の残飯があることもしばしば。汚いだけならともかく、線路の工事がよっぽどいい加減なのかやたらと揺れるくせに、つかまるところが特に身長165センチ以下の人間にとっては異様に少ない。とても、つかまらないと立っていられないくらい揺れるくせに。網棚ももちろんない。

 これでも、現在の市長になってから構内も車内も随分と明るく綺麗になったそうである。

 ついでに近郊列車。Penn Stationというところからはアムトラックも含めた、いろいろな長中距離列車が出ている。しかし、たくさんあるホームの何番線に列車が入ってくるのか、ギリギリになるまでわからない。一体、どぉ〜ゆうシステムなんだ?! かくして今日も乗客は間抜けな顔をして、天井に下がっている掲示板に自分の乗る列車が何番線か表示されるまで、ボォ〜っと改札の前にたまって上を見上げている。

(原文:96/1 加筆訂正:98/10)