アップルとMS提携発表や他の基調講演内容に関する、その場にいた者の感想

 発表の内容は、あえて私がここで書くまでもありませんが、現場ではそれほどの衝撃ではなかった、というのが大方のプレスの実感だと思います。私の隣席のカメラマンは、マイクロソフトから派遣された、と講演前に自己紹介していました(この男、Jobsが「ウェブ・サイトの64%はマックで創られてる」と言った時、独りでしきりに「嘘だ、嘘だ」と呟いていました(^^;...)。その時は、「ふぅ〜ん、MSって、こんなとこまで情報収集に来るのか」くらいに思っていましたが、提携発表で納得した程度です。業界に詳しい現場の記者が速報した比較的冷静な記事を、本社のどっちかというと経済専門のデスクがセンセーショナルに取り上げた、というのがイイ線だと思います。また、前日に報道関係者の間に「明日は重要発表がある」とのリークがあったらしく、本社もスペースをあけて待っていたのでしょう。

 いずれにしても、ご存じのように経済効果は凄かったです。ついでに、最近ではATOK11のマック版発売予定発表がありましたが、さっそくMS効果が出た、と喜んでいます。ジャストは、この提携で来年Office 98 for Macの日本語版と一緒にMS IMマック版が出ることを恐れ、あわてて先手を打ったのでしょう。私は今回の提携は、市場の活性化という点で良かったと思っています。

 大体、アップルやMSに限らず、ハイテク業界の明日なんて、誰にもわからないのです。マスコミとしては「Jobs=ルーク・スカイウォーカー」「ゲイツ=悪の帝国」というのは、非常にわかりやすくてセンセーショナル、書きやすいし読む方も楽しい。それを真に受けて、悪魔と手を組むのか、と口角泡をとばして語ったり、買収されるのか、と不安になったりするセンスは、私は持っておりません。

 Jobsにしたって、彼に金儲けや経営のセンスはどう考えてもなく、カリスマ性と夢だけで億万長者になったラッキー・ボーイ。もちろんMSを口説き落としたのも、天性の人を惹きつける力を持つ彼だからできた技だとは思います。誰もがJobsのようにはなれないし、彼はいいブレーンさえいれば大統領にもなれるでしょう。ゲイツ君では、ぺローの二の舞がいいところ。しかし、今の彼はピクサーや家庭が大事で、アップルは三番目です。

 今回の提携発表で、会場の大画面のゲイツにブーイングしたのは、一部の聴衆だけだと思います。私自身、思わずふいてしまったくらいだし、どちらかというと聴衆も拍手したり、ウケてしました。

 IEをデフォルトに、という発表も、確かにブーイングはすごかったですが、冷静に考えれば「それが何?」という話で、MSは名目上のブラウザ・シェアが増えればそれでいいだろうし、ちょっと慣れたユーザーは自分で最新版の好きな方のブラウザをダウンロードして使うでしょう。95ユーザーだって、ネットスケープ使ってるじゃないですか。私も両方、使います。IEの方が軽くて私の環境ではエラーが少ないので、仕事ではIEも使いますが、あのデザインのだささはちょっと受け入れ難いので、個人的にはネットスケープをできるだけ使っています。私のページもIEだと下フレームの絵が変わってくれないし(^^;...。

 ゲイツ君なんかより、ラリー・エリソンに対するブーイングの方が、よっぽど凄かったです。エリソンは、「ずぅ〜っと昔からマック 使ってるよ。マックは利用者が愛せる唯一のOSだよ」って言ってるのに、それでもブーイングされてしまう。わかりやすいMSより、買収発言の前科も有り、Jobsとも仲のいいエリソンの方が、油断のならない相手と映っているようです。

 個人的には、エリソンが想像していた成り金的なおっさんではなく、悪ガキのような風貌だったのに興味を覚えました。近々、彼の講演を取材する機会があるので、楽しみです。

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