「『死んでも治らん』無駄体質」

 アメリカがどんなに無駄の多い国か、アメリカ人が毎日毎日どれほど無駄な浪費を繰り返しているか、そしてそれに関していかに無頓着であるか、これまでもさんざん書いてきた。そもそも、英語に「もったいない」という言葉はないように思う。経済的、合理的に「無駄だ」という言葉はもちろんあるが、感覚的な「もったいない」という表現はあるのだろうか? 少なくとも、私には思いつかない。

 しかし、資源が「もったいない」だけでなく、経済的に明らかに「無駄」であることについても、本当に感動的なほど無頓着だ。もちろん環境についても、これほど世間であれこれ言われるこのご時世になっても、救いようがないほどに無神経。

 今さら、ちょっとのことには驚かなくなった私だが、先日、久しぶりに真剣に心から驚いた。

 最近、アメリカの郵便局で「Click-N-Ship」というサービスが始まった。インターネット接続環境とプリンタがあれば、郵便局に行かなくても、切手付き送付ラベルを印刷できる。対象は、いわゆる小包郵便で、国内便、国際便とも対応。郵便の種類によっては送料が少し割引になったりもする。自分の情報は登録されているし、送り先のリストを登録して印刷の際に簡単に呼び出すこともできる。送料はクレジットカードで決済済みなので、郵便局窓口の列に並ばなくても、(郵便の種類にもよるけど)ただ荷物を置いてくるだけでいいし、郵便配達に来た人に託すことも可能・・・というのが、売り。

 このサービスについて、私は特に興味も使う必要もないのだが、英語がよくわからない友人が「仕事で使いたい」と、いろいろ私に質問してくるので、詳しくなってしまった。これがまた、実にふざけた無駄なシステムなのである。

 例えばGlobal Priority Mailという種類の国際郵便では、自分控え、郵便局控え、荷物に貼るラベル、と、3枚の同じラベルが印刷される。ラベルの大きさは、アメリカで一般的なレターサイズ用紙(A4の長辺を少し短くしたぐらいの大きさ)の半分。ラベルだけなら、1枚目用紙の上下と2枚目上半分(下半部余白)に同じラベルが3回印刷されて終わりである。ところが、3枚目に必ず説明書が印刷されるのだ。同時にいくつもの宛先向けラベルを印刷しても、いちいちこの説明書が印刷される。友人によると、紙の無駄以上に、インクの無駄に腹が立つらしい。紙については3分の1が無駄。インクについては、説明書の文字密度が一番高いので、1つの宛先のラベルを印刷するために、同じかそれ以上のインクが浪費される。しかも、ご存じのようにインクジェットプリンタ用インクカートリッジはすぐになくなる上に結構高い。

 郵便の種類によって、ラベルと控えの合計枚数は変わってくるが、宛先ごとにいちいち説明が印刷される点は変わらないようだ。

 毎日のように郵便局に荷物を抱えてやってくるこの友人に、「Click-N-Ship」を勧めたという郵便局員に質問してみたが、彼曰く「自分が知る限り、説明を印刷しない方法は存在しない」。念のため、郵便局本体の「Click-N-Ship」のサポートにも質問してみたたら、「説明を印刷しない方法はない」と今度は断言された・・・

 こんなふざけたシステム、日本人だったら怒り狂うだろう? というか、そもそも日本人だったら、こんなシステムを考えつきもしないか・・・。内容から考えて、かなりの頻度で荷物を送る人や会社が対象のサービスだ。滅多に送らない人なら、宛先ごとに説明が印刷されたほうが親切かもしれないが、そもそもそんな人には「Click-N-Ship」なんてサービスは必要ない。毎日使ってるのに、宛先ごとにいちいち、わかりきった説明が印刷されてくる。こんな人をナメた話があるか?!

 ムカつくし、「もったいない」し、経済的にも相当な無駄だ。しかし、サポート担当が自信を持って(?)断言してしまうあたり、平均的アメリカ人は誰も何の疑問も持たないのだろう。まさに、「死んでも治らん」無駄体質である。何が「死んでも」なのか、自分でもよくわからないが、地球上の全生物が死に絶えても、例え地球そのものが死んでも、アメリカ人の無駄体質は治らないだろう。そんなことになる前に、先に人類がとっとと死に絶えることを切に願う。

(2006.6.25)