「東と西の違い・その1」

 アメリカの2大都市といえばニューヨークとロサンゼルス。この東と西の端に位置する2つの都市は、何かにつけて対照的だ。

 まず、ニューヨークは街が全体に狭苦しく人口密度も高い。一方のロスは、確かに都市ではあるが中心が無く、どこまでも平面的に広がった広大な地域だ。街全体が茶色く乾いており、緑まで茶色がかっている。

 そして何よりも違うのが人々の行動のスピード。マンハッタンではまるで平日の都内のように、信号が変わった次の瞬間にはクラクションを鳴らされる。「今、ギアを入れてるとこだよ! 馬鹿野郎」と叫びたくなる。先がつまっているのにつっこんでいくから、信号が変わっても交差する道路をブロック、結果、渋滞がひどくなる。誰も信号が青に変わったことに気付かぬまま再び赤になるロスとは、正反対だ。

 ロスで信号無視して横断歩道を渡る人間はほとんど皆無だ。大体、歩いている人間自体が少ない。狭い道では、車はちゃんと歩行者に道を譲る。ニューヨークでは皆、赤信号の横断歩道を平気で渡る。日本から来た友人を横に乗せてマンハッタンを運転していたら、友人は「歩行者が襲ってくる」と恐ろしがっていた。車も車で、歩行者の隙を見てつっこんでくる。

 話は車泥棒に飛ぶが、アメリカではロージャックなどの警備会社と契約して防犯装置を車につけている人が多くいる。これは、盗難に遭った車から電波を発信、現在地を追跡するシステムだ。そこでロスの車泥棒は、盗んだ車を人気のないところへ2〜3日放置する。誰も取りに来なければ防犯装置が付いていないと判断して改めて解体・転売などするという。ところがニューヨークでは盗んだ次の瞬間に車は船に積まれ、中南米まで持って行かれてしまうらしい。いくら警備会社が追跡しても、すぐに電波が届かなくなってしない、お手上げだそうだ。

 泥棒までのんびりしているロサンゼルスなのであった。

(原文:96/1 加筆訂正:98/9)