「真実のサンタモニカ」

 サンタモニカと聞くと何を連想するだろうか? 私など、桜田淳子が歌っていた「来て、来て、来て来て、サンタモニカ〜♪」を、まず頭に浮かべていた。実際に来てみるまでは、この歌にあるような常夏のリゾート地を想像していた。

 実際のサンタモニカは、ロサンゼルス市の西隣にある。ホームレスがたくさんいる海辺の市だ。確かに海岸線はあるが、海は汚染されていて釣った魚を食べることは禁止されている。例え綺麗だったとしても、海水は冷たい。泳いだら夏でも凍死しそうだ。当然海からの風も冷たい。内陸にあるダウンタウンが暑くても、サンタモニカの日陰で風にでも吹かれようものなら鳥肌が立つ。

 陸に目をやれば、白い砂浜にビーチバレーのネットが張られていて、それなりに悪くはない。サイクリングやローラーブレード用の小道が海岸に沿って続いており、ビキニのお姉さんがさっそうと通り過ぎたりする。

 ただし、公衆トイレに鍵はない。ドアがない物もある。仕切りすらない物もあり、中国かと思ってしまった。海岸線を南に行くほど治安が悪くなり、防犯上の理由からトイレの密室度が減っていくのだ。

 これはドアのないトイレでの話。隣の個室に入ってきた(当然)女性に、仕切り越しに物乞いされた。「こんなとこで物乞いするなよ」と恐ろしかった。さらに、その女性を、外で連れの男性が待っていた。

 「デートの途中で物乞いするとは・・・」。サンタモニカは恐いところである。

(原文:95/11 加筆訂正:98/9)