「ヘッドフォンの謎」

 93年2月にこちらに住み始めて最初に驚いたのが、ウォークマンタイプのカセットプレイヤーを聞いている人のヘッドフォンだ。これがまた、誰も彼も日本ではとうの昔に誰も使わなくなった、ヘアバンドタイプのヘッドフォンをしている。あんなもの、髪型は乱れるし格好悪いし音も洩れるし、今時外で使っている人間が日本にいるだろうか?と考えてしまった。

 ところで、最近の日本ではイヤホン型からさらに進んで、頭の後ろを通すヘッドフォンが人気のようだ。こちら、まだ初期型である。3歩くらい遅れている。

 思えば、「アメリカは世界一進んでいるのだ」、という誤解をまだ信じていた私が接した、最初の現実であった。

 実際、家電製品に関しては日本は世界一の先進国である。ほとんど体一つでやってきた私は、電気屋で安いステレオを探した。大部分の製品が、なんと、レコードプレイヤーとセットであった。それより遡ること4年前でさえ、日本で長年使っていたレコードプレイヤーが壊れた時、新しいプレイヤー探しに非常に苦労した経験を持つ私は、ブッ飛んでしまった。そういえば「ナガオカ」がレコード針の生産を中止するとかニュースになってたなあ、など、しばしこの差に思いを巡らせた。

 さすがに今ではCDプレイヤーとセットの物がほとんどだが、テレビでよくやっているオムニバスCDの宣伝を見ていると、ほとんどの商品の選択肢にカセットテープおよびレコードが入っている。これは決して、アナログの音を愛する一部クラッシックファンなどのため、といった次元の話ではない。まあ、古い物を捨てずに大事に使うのは悪いことではないが、別に今から新しくレコードを買わなくても、と思ってしまうのだが・・・。

(原文:95/11 加筆訂正:98/9)