☆ 沈まぬ太陽

監督:若松節朗
出演:渡辺謙
   三浦友和
   松雪泰子
   石坂浩二

 実に200分を超える長編大作。力作だと思うし、JALからの圧力がもの凄かったであろうことは容易に想像できるので、ここまで作り上げたことに敬意を表したい。

 序盤の編集があまりにも分かりにくくて、これは困ったと思ったのだが、途中から意図不明な場面の切り替わりもなくなり、ぐっとのめりこんで楽しめた。原作は未読だけれど巨編らしいし、内容からしてこのぐらい長くなってしまうのは仕方がないだろう。

 ここで描かれていることはほとんど現実だろうし、JALに限らず、大企業ではよくあることだろう。世の中、正義感を持ち信念に従って生きる人なんて少数派で、大抵はあくどいヤツ腹黒いヤツが勝つことになっている。人間社会というのは実に醜いものであるな・・・

 全体としてなかなか面白かったが、気になった点もいくつかある。まずCGがあまりに貧弱。それと時代がよく分からないのだが、ケニアで外国人が猟銃かついて狩りに行くという設定も非常に気になった。昔の駐在員は皆そんなことしてたのか? 個体数が多い小動物を撃つにしてもちょっと首を傾げるようなレジャー(?)だし、ましてや象を撃ち殺すなんてあまりに残忍で醜悪だ。その象、食うんかい?! それとも象牙だけ売り飛ばすのか??? なんにしてもおぞましいことこの上ない。少なくとも80年代にはすでに、ケニアで「サファリ」といえばガイドと一緒に動物を「見に」行くツアーのことを指していた。現地で観光客が行うのは、「Shooting」は「Shooting」でも、射撃ではなく撮影の「Shooting」だ。巨像を撃つ場面が何かを象徴しているのかとも思ったが、最後まで見てもそういう風には受け取れなかった。ま、さすがに終盤では主人公は猟銃ではなくカメラを持っていたけれど、それにしても時代はいつであれ、象を撃ち殺す場面を入れる必要性が理解できない。不愉快な印象を与えるだけだ。

 そして一番イライラさせられたこと。妻は女中かね?! 夫(父)に対して、なんで子どもがため口なのに、妻は敬語なんだよ??? 妻は夫ばかりか、子どもにも「仕える」存在なのかね??? 夫婦仲が悪くて距離を置くために敬語とか、あるいは封建的な家父長男に対してなら分からないでもないが、夫婦仲は普通で夫も特に強面でもないのに、どうして妻だけ夫に対して敬語なんだか、ドラマではよくあることだけど見ていて本当に不愉快!

鑑賞日:2010年7月11日
製作:2009年・日本


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