監督:原一男
企画:今村昌平
出演:奥崎謙三
どうやら廃盤(?)になっているビデオらしいが、友人が何とか入手したものをコピーして送ってくれた。
不動産屋を殺害し、天皇にパチンコ弾を撃ち、田中角栄殺害予告をした、反体制運動家(と、一言では片づけられないが)である奥崎謙三を追いかけたドキュメント。奥崎謙三もすごいけど、それを追いかけ続けた監督も、奥崎謙三の妻もすごい。日本がどうやら民主主義を破棄したいらしく、戦争もしたくてしょうがないらしい今、いろんな人に観て欲しい。
冒頭、「日本だけでなく、世界中の国家というものは人間を断絶させる、人類を1つにしない」という奥崎のセリフに大いに頷く。「人間なら腹立ててみろ」というセリフもいい。「人間が作った法律なんて、政府が変われば内容も変わる」というのも、まったくもってごもっとも。しかしそんなのは、この作品の序章に過ぎなかった。
奥崎の戦争犯罪をどこまでも追求する行動力には、とにかく頭が下がる。戦争中には上官をさんざん殴ったといい、独房に10年も入った奥崎には、怖いものはない。人間が作った法律ではなく「神に従う」、「あらゆる不幸は天罰」というあたりは、個人的には少々受け入れがたい。しかし、それが奥崎の原動力であり、彼の行動自体にはまったく賛成する。
最後、戦犯自身ではなく、「息子でも良かった」と息子を銃撃する行動までは支持しない。しかし、「それが人類のためになるなら、暴力も使う」というセリフ、日本という国の法律にしばられない「俺が裁く」という姿勢は、賞賛するし尊敬するし、はっきり言ってその行動力が羨ましい。
正攻法でいったって正義なんかまったく行われないんだから、「俺が裁く」しかないじゃん。
鑑賞日:1999年6月27日
製作:1987年・日本