監督:VACLAV MARHOUL
出演:PETR KOTLAR
UDO KIER
LECH DYBLIK
HARVEY KEITEL
主人公役の少年がとにかく秀逸。過酷な撮影だっただろうに。もちろん演技も素晴らしいが、目の力に天賦の才を感じる。
「ヴェネツィア国際映画祭で途中退場者が続出」というのが売り(?)の作品だけれど、どこか特定の場面が席を立たずにはいられないほど衝撃的というのではなく、これでもか!と、たたみかけて来る。意外に展開が早く、クライマックスかと思われた予告やポスターに使われているカラスのシーンも早々に登場してしまい、どんどん切り替わる場面に置いていかれそうになる。
ぶっちゃけ、こんな時代こんな場所に生まれなくて本当に良かった。田舎のパートでは特に、主人公だけでなく周りの人たちや動物たちもかなり酷い目に遭っていて(粉屋のじじいなんか、使用人とおかみでボコボコにしちゃえばいいのに、なんでおとなしくやられてるかなぁ)、見ていてかなり陰鬱な気分になる。
私的には、個人個人による主人公への虐待より(もちろんそれもかなり酷いんだけど)、戦争による感覚の麻痺と集団心理で怖いものがなくなった兵士たちが理不尽に村を襲って皆殺しにするシーンが見ていてつらかった。これでもかと出てくる個別のヘンタイどもみたいには自分は絶対にならない自信があるけれど、もし兵士の中に自分がいたとしたら、集団の暴走を止めるどころか自分も混ざって暴虐をはたらきそうで恐ろしいから。
ところで冒頭で主人公が抱いて走っている動物は何だろう? イタチ? 見終わった後で改めて、一時停止までして見直したけれど、よく分からなかった。
人工言語「インタースラーヴィク」というものの存在は、初めて知った。エスペラント以外にも人工言語があるんだね。
タイトルは、羽根を塗られた鳥なら劇中に出てくるから「ペインテッド・バード」の意味するところはよく分かるが、「異端の鳥」では少し違うような気がする。かといって適切な日本語訳も思いつかないし、「ペインテッド・バード」のままで良かった気がする。
鑑賞日:2021年3月26日
製作:2019年・チェコ/ウクライナ/スロヴァキア