監督：吉田喜重
出演：三國連太郎
　　　村瀬幸子
　　　河原崎長一郎
　　　佐藤オリエ

　なんとも、ずっしりと重い。見てはいけないものを見てしまったような気になる場面も登場する。少しも目をそらすことなく、「老い」「ボケ」を、真っ正面から取り上げている。

　中流家庭が、がんばって買った郊外の一軒家。３世代同居、子どもは２人。ほとんどの設定は、非常に現実的。一昔前にはどこにでもあった、ごく平均的な家庭像。家族の台詞の一言一言にまでリアリティがあるのに、河原崎演じるサラリーマンの浮気相手だけがとてつもなく非現実的で異彩を放っている。

　これはもちろん作り話である。しかし、なんと仲の良い家族であるかと思ってしまう。平穏に幸せに、のほほんと暮らしているからボケるのだ・・・と、本筋とずれたツッコミを入れたくなるほどである。

　愛に満たされた家族の悲劇は、本当に美しくて悲しい。誰も悪くはないのに、なんともやりきれないつらい話である。自分が現在、どんな年代でも、何かしら考えさせられる。見ておいて損はない作品。

鑑賞日：2001年１月20日
製作：1986年・日本