☆ IN THE NAME OF THE FATHER(父の祈りを)

監督:JIM SHERIDAN
出演:DANIEL DAY-LEWIS
   EMMA THOMPSON
   PETE POSTLETHWAITE

 ロンドンで起きた爆弾テロ事件の犯人にでっちあげられた被害者たちを描いた、実話。映画はIRAの話もからめながら進んで行くが、政治的な色合いはなく、無実の罪に陥れられた者たちや彼らを取り巻く者たちの人間ドラマだ。

 映画の要所要所で、集団が生み出すパワーやエネルギーを感じる映像が、象徴的に使われている。冒頭、アイルランドでの暴動シーンは、まるで良くできたロックのプロモーション・ビデオを見ているかのようだ。刑務所内で亡くなった仲間を偲び、囚人たちが誰が言い出すともなく紙を燃やし、次から次へと窓から降って燃え落ちる炎。「無実の4人に自由を」と街をデモ行進する人々。群衆の良さ、というのも変な表現だが、多くの魂がその瞬間ある事柄に対して一つになった時の輝きのようなものを感じる。

 犯人にされてしまうヒッピーもどきの若者を、ちょっと情けない雰囲気のDAY-LEWISが好演。THOMPSONは、決して美しくない特徴のある表情や雰囲気があまり好きではない。しかし、この作品に限り、彼女の不思議なキャラクターがしっかりはまっている。POSTLETHWAITEの哀しそうな父の演技もいい。

 イギリスの刑務所はタバコが吸える、父子が同じ監房に入れるような配慮がある、などといった点も興味深かった。

 英語では「Bad Place, Bad Time」などというが、日本語だと「間が悪い」「ついていない」などに当たるのだろう。世の中、決して正義が勝つ訳でもなければ、とことん運の悪い人生を送る人もいる。運命は、断じて平等などではない。

鑑賞日:1998年6月21日
製作:1993年・アメリカ


− ビデオ感の目次に戻る
− 映画関連コーナー目次に戻る
− トップに戻る