監督：ポン・ジュノ
出演：キム・ヘジャ
　　　ウォンビン
　　　チン・グ

　これはすごい！　緻密に練られた脚本とキム・ヘジャの圧巻の名演技。ウォンビンの白痴の演技も見事だし、チン・グの存在感もなかなか良い。小道具の使い方も秀逸で、サスペンスとしても人間ドラマとしても見事。寒々とした薄暗い雰囲気が「殺人の追憶」となんとなく似ていると思ったら、同じ監督だったか。こっちのほうが最後まで面白いけど。

　枯れ草生い茂る野原で普通の地味なおばさんが突然踊り出すオープニングに、何が始まるのかといきなり度肝を抜かれる。その後はごく普通の映像が続くのだが、何が起こるのか読めない展開にぐいぐいと物語に引き込まれていく。白痴で何も分かっていないかと思いきや、実はすべてをお見通しなのではないかと思わせるようなウォンビンの美しくも恐ろしい不気味さ。文句のつけようがないキム・ヘジャ。最初の印象はただのチンピラなのに、徐々にいい男に見えてくるチン・グの存在も、要所要所で重要な役割を果たす。

　確かにこんなに可愛い顔して頭の弱い息子がいたら、母としては心配で心配でしょうがないだろうな。絶対に、息子を残して先には死ねないな。どうでもいいけど、端役のガキンチョたちの男も女も不細工なこと・・・

　それにしても、嫌なことを忘れられるツボなんて本当にあるのかな？　２度と思い出したくない記憶を消し去れるのだったら、そんなに素敵なことはないけれど、一緒に楽しい記憶まで消えたらと思うとやっぱり怖いな。

鑑賞日：2010年９月16日
製作：2009年・韓国