監督:白石和彌
出演:佐藤健
鈴木亮平
松岡茉優
田中裕子
家族を守るために夫を殺した母親の判断は、何も間違っていない。暴力に耐えているほうが楽だったなんてこと、絶対にない。
この母親に罪があるとすれば、こんなクソ男と結婚したこと、さらに子どもまで作ってしまったこと。こういう男は絶対に恋人や妻にも暴力をふるうはずだから、それが分かった時点で別れるなり、とっとと殺すなり、しておくべきだった。殺すのが遅すぎただけで、殺したこと自体は間違っていない。こういう奴は殺しておかないと、往々にして別れた後もつきまとうし、警察に訴えたって大した罪にもならずにかえって逆恨みされて状況が酷くなったりする。というか、これだけ時間があったんだからちゃんと計画立てて、雨でよく見えなかったとか酔っ払って飛び出してきたとか言い訳考えて、故意に轢いたわけではないという偽装ぐらいしろよ。
そもそもDVや子ども虐待を繰り返す人間は、無条件に死刑でいい。そういう人間は永遠に更生なんてしないから。しかも、虐待されて育った人間はかなりの確率で自分も誰かを虐待する。負の連鎖を止めるには、元を断つしかない。
などなど、一般論ばかり書いても仕方がない。この映画の感想を書かねば・・・。
一言で言えば、役者が揃っている。佐藤健はゴロツキにしか見えないし、鈴木亮平もちゃんとオタクに見える。田中裕子は貫禄だし、筒井真理子はまた若い男たぶらかしてんのか、と笑ってしまった。韓英恵は、妙に「男前」で格好いい。松岡茉優は芸達者なのは分かるけど、顔に特徴がないというか、どんな顔してるのかいくら見てもよく分からん。私としては、変わり身も見事な佐々木蔵之介の演技にいたく感動した。
主題は、3組の親子の(筒井真理子と義母はちらっとしか出てこないけど)切ない物語。佐藤健と佐々木蔵之介が、まるで相手が自分の親や子であるかのようにやり合う場面は、胸が締め付けられる。
この家族は、とっとと引っ越して知り合いのいない土地に行くべきだった。本当に子どもたちを自由にするつもりなら、家も会社も売り払って、無理矢理にでも別天地に行かせるべきなのに、親戚に会社を引き継がせて子どもたちをその場に縛り付けるなんて矛盾してる。
長男の妻が、地元のくせに何も知らなかったというのは、あまりに不自然でちょっと白けた。稲丸タクシーが、あれだけ酷い嫌がらせを繰り返された上に2台廃車にして金銭的ダメージは相当なハズなのに、何事もなかったかのように営業してるのもあり得ない。
でも、全体を通していい作品であることは間違いない。演技も素晴らしいし、登場人物の悲しみや苦しみが胸に染み入る。
鑑賞日:2020年9月11日
製作:2019年・日本