☆ 悲情城市

監督:ホー・シャオシェン
出演:トニー・レオン
   シン・シューフェン
   リー・ティエンルー

 中国人マフィアが出てきて抗争を繰り広げそうなタイトルだが、全然違う。第2次世界大戦が終わり日本の支配から開放された1945年から、蒋介石による支配が始まる1949年までの激動の台湾が舞台。時代に翻弄されながらも、力強く慈しみ合いながら生きていく市井の人を159分かけてじっくり描いている。

 物語は、聾唖の青年とその家族を軸に展開していく。トニー・レオンが、生真面目で優しく、他人とのコミュニケーションが難しいせいか美しいのに控えめで奥手、誰もが思わず手をさしのべたくなるような愛おしいキャラクターを実に見事に演じている。

 文句ばかり言っている長兄、気がふれた下の兄、政治運動に携わる親友、これまた奥手で控えめで優しいその妹、やばい仕事に手を出す仲間などなど。登場人物は皆個性的だが、誰もが憎めない存在に描かれている。

 登場人物の誰かというより、台湾そのものの悲劇が主題なのだろう。つらく悲しい物語であるのに、不思議なほど暗さがなく、優しくて暖かい。

鑑賞日:2002年3月20日
製作:1989年・台湾


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