☆ 橋のない川

監督:今井正
出演:北林谷栄
   長山藍子
   伊藤雄之助

 明治から大正にかけての被差別部落を題材にした住井すゑの有名な小説を映画化した作品。とにかく見てください、としか言えない。ちなみに、92年に再映画化された同名の作品は、駄作らしい。

 この作品に対して演技がどうこうなどと評価するのは場違いなような気もするが、脚本や役者の感情表現が素晴らしいからこそ、見ているほうも心を揺さぶられる。第一部の出来が特に素晴らしい。

 子役が非常によくやっているし、畑中ぬいを演じる北林谷栄の存在感は圧倒的だ。永井藤作役の伊藤雄之助は、第一部第二部ともに、もう「すごい!」としか言いようがない。

 この頃と比べて、日本は差別のない国になっただろうか? 多分、大した違いはない。世界中、ほとんどの国や地域に被差別グループが存在する。日本が生きにくいのは、皆平等という建前を無邪気に信じている能天気な人が多いからだろう。悪意を持った言葉より、悪気のない無意識な差別的言動のほうが、よほどたちが悪い。「差別はある」という大前提のもとで、それでも皆がせめて平穏に暮らせるよう、他人を不愉快にする言動を慎むしかない。最近よくあるような、単なる言葉狩りではなく。

鑑賞日:2002年4月16日
製作:1969年(第一部)1970年(第二部)・日本


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