監督:トラン・アン・ユン
出演:リュ・マン・サン
トラン・ヌー・イェン・ケー
グロテスクと言っては誤解を招くような気がしないでもないが、他にこの映画全体を表現する言葉がみつからない。セリフも説明的映像も少なく、物語は淡々と進んでいく。にもかかわらず、非常にねっとりとした、いろいろな意味で実にグロテスクな映画に仕上がっている。
リュ・マン・サン演じる少女時代の主人公は、けなげで愛らしく、同時にクールでしたたかである。年配のお手伝いさんが唯一ごく普通に見える登場人物。主人公の奉公先のお母さんは、ただただ悲しい。この3人以外の主要登場人物は、子どもから大人まで、本当にグロテスクで不気味。外見が不気味だったり、しぐさが不気味だったり、言動が不気味だったり。子どもなんて皆あんなものなのかもしれないが、改めて生々しい映像を見せられると、全編に流れるねっとりとした雰囲気と相まって吐き気をもよおす。
中盤、映画の中で10年の月日が経過し、10歳だった主人公は20歳になって登場する。すると、なんたることか! 登場人物の中で唯一かわいかった主人公までが、いきなりグロテスクになってしまっている。可憐さは見事に消え去り、ただただしたたかで不気味でねっとりしている。
この独特の雰囲気。決して「見なければ良かった」とは思わないし、逆に「見て良かった」作品ではある。けれども、同時に実に何ともグロテスクな作品なのだ。
鑑賞日:2001年9月10日
製作:1993年・フランス&ベトナム