☆ 震える舌

監督:野村芳太郎
出演:十朱幸代
   渡瀬恒彦
   若命真裕子
   中野良子

 アマプラで作品の詳細を見ようとクリックしたつもりが本編の再生が始まってしまい、まあいいか、と、そのまま視聴した作品。なので予備知識なしで見てしまい、かなりの衝撃だった。後から調べたところ、オカルト・ホラー的趣向で製作された作品で、予告編で「新しい恐怖映画」とうたっていたそうな。さもありなん。「破傷風」という病気自体も怖いのだが、確信犯的にエクソシスト的な映像による恐怖も煽ってくる。

 十朱幸代も渡瀬恒彦も、それはもう素晴らしい熱演だけれど、それ以上に子役の若命真裕子の迫真の演技が強烈。もちろん劇中の少女に感情移入して可哀想ではあるのだが、それ以上に若命真裕子本人が気の毒で、見ているのがつらくなってくる。

 いくら規制が甘い日本でも、さすがに今だったらこんな作品、撮影できないのではないか?(いや、つい先日も撮影で小学生を本当に殴ったと問題になっていた作品があったし、日本だったら今でもやるか?) 撮影だ、映画だ、と言っても、「映画」の意味を本当に理解しているかどうかも怪しいような幼い子どもに、あんなひどいことをするなんて、幼児虐待以外の何物でもない。あんなに真に迫る演技ができる子だったのに、この1作品にしか出演していないというのも納得。こんな酷い目に遭ったら、もう二度と映画やドラマになんか出たくないだろうし、いかなる撮影現場にも行きたくないだろう。彼女が一生トラウマを抱えて生きるようなことになっていないことを祈るのみである。

 といった感じで見ながら余計なことばかり考えてしまったのだが、「恐怖映画」としてのできはなかなか。「破傷風」という名前は知っていても具体的な症状については知らない人が多いと思うが、これを見たら真剣に恐ろしくなる。親の立場で考えると、これがまた身につまされて見ているのがつらい。小さい子どもがいようものなら、怖くて子どもを外で遊ばせることができなくなるだろう。

 中野良子演じる主治医も、外見も言動も何だか不気味で非常に怖い。

 それにしても、さんざん怖がらせておいて最後はサラっと終わり過ぎじゃないのか? 結末は原作と変えて、どうせなら恐怖映画に徹してほしかった。

鑑賞日:2022年10月4日
製作:1980年・日本


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