☆ 日本の黒い夏[冤罪]

監督:熊井啓
出演:中井貴一
   北村有起哉
   石橋蓮司
   寺尾聰

 94年に起きた、いわゆる「松本サリン事件」における「報道被害」を題材にした作品。「報道の良心」を中井貴一が、「現場の本音」を北村有起哉が、リアルに演じている。

 石橋蓮司の微妙な演技が見事。寺尾聰も実に適役。事件報道を取材している女子高校生はあまりに純粋かつ生真面目で、見ているほうが気恥ずかしくなる。

 ていねいな取材に基づく力作だと思う。ただ、登場人物の中で一番嫌なヤツですら、現実より随分とマシに描かれている。それに、こんなに良心的なスタッフが揃ったテレビ局はないだろう。毎日あんな仕事してると、この仕事を選んだ時は確かに感じていたハズの義憤や良心なんて、疲労の彼方に追いやられてどっかに消え失せてしまう。

 映画のモデルになった河野さんが、ほとんど植物状態になってしまった妻を車椅子に乗せ、自然の中を散歩している場面をテレビで見たことがある。何も答えない、表情ひとつ変えない妻に、一生懸命話しかけている河野さんの姿に涙が出た。映画の中にも、似たようなシーンが登場する。実際の彼女が、少しでも回復していることを願う。

 現実には、こんな映画を何回観たところで、一般大衆は決して変わらない。ニュース報道を疑おうともせず、時にはゴシップ誌紙やワイドショーの情報までも鵜呑みにし、会ったこともない他人を知ったかぶりして罵倒するのである。

 メディアは相も変わらず、他人のプライバシーを追い回す。去年末、拘置所から出た野村沙知代の車を、ヘリまで飛ばして追いかけて撮影し、ニュース番組で放送していたのには、怒り心頭呆れ果てた。ワイドショーじゃない。毎日15分程度の貴重なニュース(日本で放送されている「FNNスーパーニュース」からの抜粋)の枠内で放送していた。脱税した芸能人が留置所から出てどこに行こうと、知ったことか! どこに報道の必要性、公共性があるんだ?! そんなに他にニュースがなかったのか?! そんなに取材費が余っていたのか?! 反吐が出るわ!

(映画の感想というより私見表明になってしまった・・・)

鑑賞日:2002年3月10日
製作:2001年・日本


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