監督:GERALD KARGL
出演:ERWIN LEDER
SILVIA RYDER
EDITH ROSSET
RUDOLF GOTZ
公開当時、欧州各国で上映中止・禁止になったという、曰く付きの作品。近年、世界的に再評価されているそうなので見てみることに。
実に独特なカメラワークがタイトル通り、不安感をあおる。いかにも80年代な電子音も相まって不快度は高いが、もちろん不快な映画だと分かって見ているのでそれは問題ない。ただ、まるで実際の記録映像かと思うようなダラダラと続く間延びした展開に、後半は集中力が切れてしまった。実話ベースとはいえ、もうちょっと映画的に編集(省略)してくれたほうが見やすかった(ま、見やすいかどうかなんて、作る方も見る方も考えもしないか)。
演技力の問題なのか、そういう演出なのか、実際にそういう場面になったら普通はそういうものなのか分からないが、被害者が誰も、妙に淡々としていてちっとも怖そうじゃなかったところには違和感を覚えた。レストランにいた人たちの最後の表情も、あまりに淡々としている。お国柄なのか。大げさにギャーギャー騒ぐ演出に慣れてしまったこちらが悪いのか。
それにしても主人公の犯行は、非常に稚拙で行き当たりばったり。「今度は捕まらない」と言いながら「捕まえてください」と言わんばかり。タクシーでは一体何がしたかったのか??? 確かに残忍ではあるけれど、上映中止にするほどのものとは全く思えない。
もしかすると、映像自体より、言葉で語られる主人公の生い立ちのほうが問題なのか? 確かにあの生い立ちを映像化したら、この映画の何倍も残虐で見るに堪えない映画になるだろうな。
こんな人間でも、日本と違って、刑法39条で守られるわけではない。日本だったら無罪で精神病院送りになりそうなもんだ。でも、責任能力を認めておきながら死刑にもならない。いいんだか、悪いんだか。
それにしてもベンツのトランク、どんだけ広いんだ?!
鑑賞日:2021年3月30日
製作:1983年・オーストリア