☆ おおかみこどもの雨と雪

監督:細田守
声の出演:宮崎あおい
     黒木華
     西井幸人
     菅原文太

 子どもと一緒にかなり大量のアニメや特撮映画を見ているが、露骨に子ども向けの作品についてはここにいちいち掲載していない。しかしこの作品は、ソフトながらもベッドシーンも描いているし、恋愛の描き方も子ども向けとは思えないし、小さい子どもが退屈しそうなぐらい静かなシーンも多い。劇的な出来事が起こるわけでもなく、どちらかというと大人向けかなと思ったので、ここに書くことにした。

 不必要に声優が本職ではない人たちを多用しているわりに、違和感は少ない。自然の描写も美しい。子ども達もかわいいし、動きも生き生きしている。しかし、どうにも後味が悪い。

 そもそもあり得ないファンタジーを前提にしているお話なので、狼男が運転免許証取れるのか、とか、自分ちで勝手に生んだ子に戸籍や住民票が取れるのか、とか、そもそも若い子が完全に一人で子ども産めるのか、とか、現実的な問題をいちいち指摘しても意味がないのだが、それにしても主人公の女性は相当な天然だよな。いくら父からいつも笑っているように言われたからって、普通だったら怒るしキレるし投げるし諦めるような場面の数々を常に笑顔で乗り越えていく。性格設定があり得なさすぎ・・・。そして、姉と比べて弟ばっかりかわいがる。弟の命を救った姉をほったらかして弟の心配ばかりして、姉に対するねぎらいの一言もない。手がかかる子ほど可愛いとはよく聞くし、突然消えてしまった夫の姿を息子に重ねているのも分かるけど、特に後半はあんまりにも弟ばっかりでひど過ぎる。見ていて不愉快。それに対して姉がまったく不満な様子を見せないのも、本筋ではないにしてもおかしな話。監督がわざとそうしたのか、意図したわけではないのか、不明だけれど、家族の描き方が偏ってる。タイトルからして、本来なら「雪と雨」にするべきでしょ。

 ついでに、せっかく奨学金をもらって一生懸命通っていた大学も、結局そのままほったらかしで中退かよ・・・。かわいい息子(=夫の分身)のそばを離れることは、絶対にできません、ってか? ってかそもそも、相手が狼男だろうと普通の人間だろうと、学生だったら避妊するでしょ、普通。

 まあ、穏やかで優しくて笑えるし、映像が美しい作品だとは思うけど、見終わった後の印象は微妙。手放しで面白かったとか、いいお話だったとかは、とても思えないなぁ。

鑑賞日:2015年6月7日
製作:2012年・日本


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