監督:平山秀幸
出演:原田美枝子
中井貴一
野波麻帆
既にいろいろなところで言われていることだが、原田美枝子の演技は想像以上に圧巻である。鬼婆である母「豊子」と、主人公である娘「照恵」を、見事に演じ分けている。1人二役の作品では、同じ人間なのだから当たり前なのだが、あまりに2人が似すぎていて、どうもしらじらしく見えることがある。しかしこの作品では、どうしようもなく激しい豊子と、おどおどした照恵が、本当に違うのだ。原田美枝子をまったく知らない人が、何の予備知識もなしに見たら、同じ俳優が演じているとは気づかないだろう。
台湾での遺骨探しのシーンは、多少、冗長で唐突な感を受ける。作品全体の印象を壊してしまうほどではないが、全体に長い作品なので、もう少し台湾のシーンをカットしても良かったように思う。
例え実の母であっても、あれほどまでに自分を虐待した相手に対して、好きとか恋しいとか愛しいとか、そんな感情を抱けるものだろうか?
「愛を乞うひと=照恵」といった解釈が一般的なようだが、私は、愛を乞うていたのは「豊子」なのだ、と感じた。
鑑賞日:1999年7月20日
製作:1998年・日本