☆ 12 YEARS A SLAVE(それでも夜は明ける)

監督:STEVE MCQUEEN
出演:CHIWETEL EJIOFOR
   LUPITA NYONG'O
   BRAD PITT

 監督スティーブ・マックイーンって、「あの、往年の二枚目俳優???」と思ったら、全然違った。黒人の監督でした。まあ、そうだよね・・・

 見て楽しい映画ではないことは最初から分かっているのに、貴重な時間を割いてなぜ見るのか? それは映画賞を多数受賞していることに加えて、何だか見なきゃいけないような気分になる内容だから。

 それでも、タイトルからして結末は分かっている安心感がある上、描写も思ったほどエグくなくて助かった。小学生の頃に毎晩「ルーツ」をテレビで見て衝撃を受けた世代としては、奴隷に対する暴力描写がだいぶ弱めてあるように感じた。

 しかも、出てくる中で一番ひどい目にあっているのは主人公ではなく、別の女性奴隷だ。主人公は、かつて彼女から自殺幇助を依頼されて断ったことを、後に後悔しただろうか。確かにあんなに理不尽で片時も救いのない地獄の人生、誰もいらない。生まれた時から奴隷だから、主人公が抱いていたような、いつか誰かが助けに来てくれるという希望のかけらすらない。これがフィクション、ヒーロー物だったりしたら、主人公は彼女にむち打つことを拒否して代わりに自分が半殺しの目に遭ったりするところだが、そこは実話。主人公は(誰でも普通は当たり前のことだけど)自分が大事、自分はなんとしても生き延びていつか家族に再会しなければならない、だから嫌々ながらも命令に従う。しかし心には深い傷を負ったことだろう。実にリアルで残酷な現実。

 それにしても人類というのは本当に愚かで救いようがない。他のどんな生物が、生きるために必要なわけでもないのに、時には楽しみのために、他の生き物(含:人間)を虐待したり殺したりするのか?!

 主人公が首を吊られた状態での長回しの場面に、監督の意図が集約されている。

鑑賞日:2016年1月22日
製作:2013年・アメリカ


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