全編に流れる暗さ、気だるい雰囲気、この映画のために体重を増やした腹の出たスタローン。70年代の映画を思わせる、淡々としたストーリーの流れ。商業主義の派手なシーンも、笑いもない。でも、不思議と飽きさせない。
まるで、最初のロッキーの頃のようなスタローンは、自信がなく、鈍く、ボソボソとしゃべる。ちっとも格好良くないが、でも、あの頃の、寂しげな目がいい。変な時代がかった髪型のデニーロは、一瞬、誰だかわからないほどにださい。珍しくサイコ野郎以外の役のレイ・リオッタは、相変わらず目が赤く充血している。小太りの、どこにでもいそうなアメリカンだ。
内部に汚れたヘドロをため込んだ大都会の郊外の日常生活が、表面上は静かに流れてゆく。しかし、一度、誰かがかき混ぜてしまうと、表面の澄んでおだやかに見えた水は、底から沸き上がる汚水でたちまち濁ってゆく。
汚いおやじどもは、ベテラン俳優陣がしっかり固めている。ほんのちょっとだけ救いを与えてくれる、やせた美しい人妻。良心がありながらも、周囲の流れに逆らうことができない中年女。でも、誰もが、自分の偽りの平和を守りたい。誰かが死んでも、それで表面を繕えるなら、それでいい。スタローンまでもが思考を停止したまま、過去の幻影にうなされる。
一年ちょっと前に小規模に公開されていた、この監督のHeavyという作品を観たいと思いながら、機会を逃していた。今度、ビデオを借りて来よう。しかし、10年前は自由自在に自分の体重を変化させ、トラボルタにまでダイエットさせたスタローンだが、この年になってあんなに太ってしまって大丈夫なのだろうか? たるんだスタローンは見たくないなぁ。
鑑賞日:1997年9月23日
映画館:CINEPLEX ODEON PARK & 86th
アッパ−イ−スト