この映画が公開された直後、何だか私の周りの人々はやたらとこの映画の話をしていました。そこで私も遅ればせながら見に行ったのですが、これがまたとっても良かった！　監督はフランス人らしいのですが、確かにアメリカ映画らしからぬ哀愁が画面全体に常に漂っています。

　リノが一流の殺し屋でありながら、私生活では一鉢の植木だけを親友のように大切にしている冴えない中年男を哀愁たっぷりに演じて最高です。ポートマン演じる、弟を殺されリノに助けられたことから彼に身を寄せることになる少女がまたいい。復讐を誓い、自分も殺し屋になろうとリノに教えを請いながらも、やはり本当に人を殺すことなんかできっこない。ここで本当に殺し屋になって「ニキータ」のように面白いけれどリアリティーのない映画になってしまわなかったところがこの映画のいいところです。不器用な男の少女に対するぎこちない愛と、彼を慕い彼を喜ばせようとする少女の幼い愛が哀しくも素敵です。

　結局少女の復讐を遂げるために悲劇的な結末を迎えるのですが、最後まで少女とそして大切な植木を守ろうとする男が本当に滑稽なほど真剣で純粋でそして悲しくスクリーンに描き出されます。ラストに流れる曲がとっても合っていて泣かせます。画面にテロップが流れ出しても、どうぞ曲が終わるまでは席を立たないでください。

鑑賞日：1994年12月4日
映画館：AMC CENTURY 14
　　　　センチュリーシティ