一瞬「レッドオクトーバーを追え」のような作品かな、と思ったのですが全く違いました。この作品は外敵との駆け引きではなく、潜水艦という閉ざされた空間の中での極限に近い状態における人間模様を描いています。
ストーリーはロシアに核攻撃をするという何だか冷戦時代の名残りのような、でもチェチェン情勢などを考えるとあり得ないこともないような設定です。が、敵はほとんど出てきません。劇中でワシントンが本当の敵は「戦争そのもの」である、と語りますが、敵は己の内にありといったところでしょうか。船員それぞれの思惑を乗せて潜水艦は海底深く、他から隔離された世界に入って行きます。はっきり言ってこの映画の登場人物はハックマン演じる古い時代の好戦的な軍人とワシントン演じるインテリ軍人の2人しかいないも同然です。他にも当然乗組員はいるのですが、ほとんど小道具のような扱いです。逆に、この2人の駆け引きや衝突の演技が凄すぎて周りが霞んでしまったとも言えるでしょう。とにかくこのベテラン2人の緊迫感みなぎる演技は圧巻です。最後があまりにさわやかすぎるのが少々気に入りませんが。
潜水艦映画だということで、派手にドンパチやるアクション映画を期待して見に行くと大きく裏切られます。ですが心理劇といいましょうか、人間ドラマとしてのデキはかなり上等です。元気があって、見終わった後で多少疲れても構わないという時に見に行くことをお勧めします。
鑑賞日:1995年6月1日
映画館:AMC CENTURY 14
センチュリーシティ